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  • 2016.04.07

    ブログ「出たとこ勝負」特別編 石井校長 中学校入学式 式辞

    出たとこ勝負

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 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。成城学園中学校高等学校は皆さんを歓迎いたします。6年間一緒に学んでいきましょう。この4月、皆さんの入学にあわせて新校舎が完成いたしました。我々教職員も6日前からようやく新校舎での活動を始めたばかりです。皆さんは新しい校舎で6年間を過ごす最初の学年ということになります。成城学園の目指す教育を実現しやすい校舎となるように様々な工夫をいたしました。しかし何より大切なのは皆さんがその場所で思う存分に中高生活を作り上げていくということです。皆さんが新しい校舎を育てていってください。
 新校舎を建設するにあたって、これまで私が接することのなかった方々と定期的にお話しすることがありました。特に設計を担当した日建設計、工事を担当した熊谷組、備品と引っ越しを担当した紀伊国屋書店の方々とはお目にかかる機会がかなりありました。そして時々「我々教員とはずいぶん雰囲気が違うなぁ」ということを感じることがありました。
 違いが何なのかあれこれ考えてみました。いくつか思いついたのですが、その中の1つを今日の話の入り口にしようと思います。
 うまい言い方が見つからないのですが、建築関係者の皆さんは「ストレートな明るさ」とでもいうような雰囲気をお持ちのように思えます。あるいは純粋に楽しそうに働かれているように見えます。もちろん教員の中にも明るい人間はたくさんいますし、仕事を楽しんでいる人もいます。でも私にはなんだか質的に違いがあるような気がしたのです。ずっと気にはなっていたのですが、校舎が完成に近づくにつれて、自分なりの答えを見つけました。まさに今申し上げた点です。「完成する」ということです。建築がいかに大変な作業であるかは見ていて実感いたしましたが、そのお仕事は「完成」という結果につながります。努力を重ねてきた成果を完成品として目にすることができます。このことが私の感じた「ストレートな明るさ」につながるのかもしれないと思ったのです。モノづくりの魅力はこういう点にもあるのでしょう。日本は戦後、モノづくりによって発展してきた国です。何かを完成させる達成感は格別です。
 一方で我々教員の仕事に完成はありません。言い換えれば、皆さんの学校生活に完成はありません。この違いは大きい。保護者の方々から皆さんをお預かりして6年間一緒に過ごします。たくさんのことを学び・経験して皆さんは成長します。それは驚くべき変化です。しかし勉強面でも・肉体面でも・精神面でも皆さんは完成しないまま巣立っていきます。我々はけっして完成品を見ることはありません。どんなに誠実に仕事をしたとしても我々の仕事は終わりを見ることはないのです。我々教員の明るさが不思議なカーブを描いているように私が感じてしまうのはそのせいなのかもしれません。
 そうやって考えてみると、そもそも人間が完成するということがあるのかという疑問に突き当たります。今日のような区切りの日を迎えた時、「これは通過点だから」という言い方をよく耳にします。では人生に終着点、すなわち完成する日はくるのでしょうか。キミたちはついこの間、小学校を卒業し、今日この中学校に入学しようとしています。3年後には中学を卒業し、6年後には高校を卒業することになります。その年月の間にキミたちはものすごい勢いで変化していきます。そして多くの人は大学に進学することでしょう。しかし大学生になったとしても人として完成したとは言えそうにありません。
 では社会人になって独立したときでしょうか、それとも結婚して子供をもうけたときでしょうか。さらにもっと先、この世とお別れするときの自分を思い浮かべてみても、私にはとても「完成」した人間になっているという自信はありません。
 確かに成長が止まることはあります。私の身長は171センチですが、いくら牛乳を飲んでもこの先180センチになることはありません。最近は目もかすんできました。他の点でも、すでに限界を過ぎてしまったことがたくさんあります。しかしそんな私でもいまだに次々と新しいことを知ることができます。皆さんの学校生活が充実したものになるように新たな工夫を思いつくこともあります。こうして皆さんに向けて伝えたい言葉をつむぎ出すこともできます。そうやってちょっとずつ私も成長している。変化し続けるということが人にとって極めて重要だということです。
 同時に人間は完成した自分の姿を想像することができます。一生かけてこんな能力を身につけるのが理想だとか、こういう容姿を手に入れたいとか、人格を磨いて立派な人間になりたいとか、完成した姿を目標として思い描くことは可能です。でも仮にその目標が実現してしまったときには、きっとすでに次の理想を追い求めていることでしょう。そういう意味でも人が完成するということはないと言えそうです。
 1日1日は平凡に見えてもキミたちは大きな変化の中を生きています。皆さんにお願いします。終わりのない変化の中で人生をとらえてください。6年間の中高生活の中では勉強がうまくいかないこともあるでしょう。友達と仲たがいすることもあるでしょう。しかしそういう状態は、長くは続きません。それらを大きな変化の流れの中で眺めてみれば、きっと次への一歩が見えてくるはずです。
[挨拶部分は省略]

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