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  • 2016.03.19

    ブログ「出たとこ勝負」特別編 石井校長 中学校卒業証書授与の会 式辞

    出たとこ勝負

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 [挨拶部分は省略]
 みなさんの多くは4月から成城学園高等学校の生徒になります。知っての通りこの4月からは新校舎での生活ということになります。また他の進路を選んだ人は今までとは違う世界に足を踏み入れることになります。どちらにしても色々な点で変化がありますが、まずは新たな環境に慣れて、すばらしい高校生活が始められるよう、気持ちを引き締めて準備をしていってください。

 新校舎にはグローバルゾーンというエリアが設けられています。いま世界は加速度的にグローバル化を強めています。ひとつの国の中だけでは物事を進めることができない時代になったということです。皆さんもお分かりのように、日本は人種的にも言語的にも文化的にもかなり均一性が高い国です。第二次世界大戦後の短い期間を除けば、他国に支配されることもなく過ごしてきました。すなわち長い間、自分たちの中だけで物事を進めることに慣れてしまった国です。これからの時代は良くも悪くもそうはいかなくなります。そのためのいろいろな準備や経験を積んでいく拠点がグローバルゾーンだと理解していただければ良いと思います。その中心となるのはやはり外国語の学習ということになります。今日はそのことに関する話をしたいと思います。
 まずは一人の女性を紹介します。名前は本郷はつきさんです。私が22歳の時、教師になって最初に担任を持ったクラスの一員でした。中学を卒業するときにクラスの卒業文集の委員をやってくれて最後まで責任を持って完成させてくれた記憶があります。中学卒業後は特に連絡を取っていたわけではありませんでしたが、十数年後フランスで本郷さんと再会することになりました。当時私はアルザス成城学園で仕事をしていたのですが、そこに電話がかかってきて「いまドイツにいるから遊びに行っても良い?」という連絡でした。もちろん喜んで迎え、我が家に2~3泊していってくれました。その後も年に1・2度、日本語がしゃべりたくなると我が家に来て、帰国するまでの数年間を過ごしてくれました。
 本郷さんはお菓子作りが大好きで、その修行のためドイツに来ていたのです。本郷さんは高校を卒業する時点で自分の将来のことを考え、大学に4年間行っていたらお菓子作りの修行のスタートが遅れるということで成城の短期大学に2年間通い、何年か会社勤めをして渡航費用を稼いで、ドイツに渡ってきたということでした。修行の場をドイツに選んでからはドイツ語の学習にも取り組みました。見習いから始めて、何軒かのレストランやお菓子屋で働きながらドイツ菓子のマイスターの資格を取得しました。現在ではネット販売を中心に日本でお菓子作りをおこなっています。
 私がアルザス成城学園に勤めていたときに我が家を訪ねてくれた卒業生をもう一人紹介します。吉田千賀さんです。さきほど紹介した本郷さんの次に、私が25歳の時から担任したクラスに在籍していました。吉田さんはオーストリアのインスブルックでスポーツ科学の勉強をしていて、アルザスまで遊びに来てくれました。成城大学を卒業した後、ヨーロッパに渡ってスキーを中心に活動していたのですが、長野オリンピックの時にドイツ語ができるということで、オリンピックの組織委員会から声がかかり通訳をすることになったそうです。現在は日本スキー連盟と国際スキー連盟のお仕事をしていると聞いています。特にスキーのジャンプ競技では大会運営のコーディネーターとして活躍されています。
 ここで皆さんに注目してもらいたいのはこの二人の先輩と外国語とのかかわり方です。もともと語学に興味があって獲得したわけではありません。自分の好きなこと、本郷さんにはお菓子作り、吉田さんにはスキーだったわけですが、それに一所懸命に取り組む時、さらに自分をレベルアップさせるのに必要な手段としてドイツ語を獲得していったわけです。スポーツの世界はいち早くグローバル化が進みましたから、そういう選手がたくさんいますね。サッカー日本代表のゴールキーパーを務める川島永嗣(えいじ)さんは英語だけではなく、イタリア語・スペイン語・ポルトガル語の日常会話は問題ないというのは有名な話です。キーパーがディフェンス陣に指示を出せなくては仕事にならないと、雑誌のインタビューでおっしゃっていました。先日世界卓球で銀メダルを取った福原愛さんが当たり前のように中国語のメールを打っている姿をテレビで見たことがあります。中国は卓球の先進国だからです。
 鋭いみなさんのことですから、私の言いたいことはもうお分かりですね。自分のやりたいことをとことんやれ。必要な語学力は必ずついてくる。
 みなさんのほとんどは最初の外国語の学習として英語を3年間学んできたわけですが、もちろん中には語学そのものが好きで、英語の勉強に興味を持つ人もいるでしょう。でもすべての生徒がそうなるわけではないのは当然のことです。それでも英語の勉強が大切なのは、最初に言ったグローバル化との関係です。お菓子作りもスキーも日本でやることは可能です。でもやりたいことを突き詰めていった先には海外での挑戦が二人を待っていた。避けては通れない道だった。現代はどんな道に進むにしても、誰にとっても外国語と出会い、折り合いをつけていく必要が生まれる世の中なんだと覚悟しておくべきなのです。ですから英語の勉強は英語そのものを身につけるだけではなく、外国語を学ぶプロセスを体験しておくことが重要なのです。その経験はどんな外国語と出会った時にも生きてきます。そして外国語の獲得は、自分の興味のあること、好きなこと、成し遂げたいこと、そこに本気になっている人にとっては最終的には乗り越えることのできる壁なのです。

 高校での3年間をどう過ごすのか。すでに目標のある人はそれを具体的なプランに高めてください。まだ目標の定まっていない人は色々なことに挑戦して、心のアンテナを張り巡らせて、本気になれることを見つけてください。そしてどんな民族の人たちとも対等に接することのできるグローバルな感覚を身につけていってください。自分を助けてくれる人も、自分が助けの手を差し伸べる相手も日本人とは限らない。そういう時代の中にすでに皆さんはいるのです。
 [挨拶部分は省略]

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