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  • 2016.04.11

    ブログ「出たとこ勝負」特別編 石井校長 高等学校入学宣誓の会(第69回入学式) 式辞

    出たとこ勝負

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[挨拶部分は省略]
 絵を観るのが好きなので、私はこの前の冬休みに、二つの美術館を訪れました。ひとつは伊豆の伊東市にある「池田美術館」です。ここにはルノアールなどの印象派の作品やダリなどのシュールリアリズムの画家の魅力的な作品が、それほど点数は多くないのですが常設展示されています。キリンの首に引出しがあって頭が燃えているダリの作品は写真などでときどき見かける作品ですからもしかしたら見たことのある人もいるかもしれません。
 もう一か所は甲府にある「山梨県立美術館」です。私はここの年間パスをもっているので、たまに行くのですが、その時はマリーアントワネットに仕えたルドゥーテという植物画家が描いたバラの絵の特別展を観に行きました。ここの常設展には「種をまく人」などのミレーの作品がいくつもあって、なかなか見ごたえのある美術館です。
 たまたま短い期間に二つの美術展を観たことによって、驚いたことがあります。それはどちらの美術館もすいていたということです。これだけの素晴らしい作品が並んでいるのに、客が少ない。ガラガラというわけではありませんが、ポツリポツリという程度の人数です。印象派やミレーは日本人には人気のある画家のはずです。ゆっくり絵を味わえるという点では私としてはすいているのは嬉しいのですが、もったいないなぁという気持ちにもなりました。そしてなぜすいているのだろうと考えてみました。
 どちらの美術館もやや不便な場所にあるということは理由として挙げられそうです。最寄りの駅からバスかタクシーを使わないと行けないというのは客が来にくい理由にはなります。でもさらに行くのが大変そうな瀬戸内海の小豆島や直島でおこなわれている美術展にはたくさんの人が押し寄せていると聞いています。ですから必ずしも場所の問題とは言えない。
 もうひとつ考えられる理由は常設展示、つまり1年中展示をしているので、絵が好きな人はすでに観に来てしまったということです。これもありえますが、私は今までこの二つの美術館を訪れたことがあるという人に会ったことがありません。おそらくこれもそれほど中心的な理由ではないでしょう。
 そう考えてみると答えは簡単です。おそらくテレビなどのマスコミやインターネット上で話題になっていないというのが、二つの美術館がすいていた理由の大半なのではないでしょうか。
 我々は様々な情報を、テレビやラジオのような電波を通じて、あるいは本や雑誌などの出版物によって、そして近年ではインターネットなどの新しい方法を用いて得ています。それらはもちろん大変便利で有効な手段です。しかしそこには情報を発信している側のねらいがあるということも忘れてはいけません。
 話を美術展に戻しますが、客が多すぎてゆっくりと絵を鑑賞できないような展覧会があります。他のお客の肩越しにしか絵が見えない。ここは竹下通りかというような美術展です。駅にはポスターが貼られ、雑誌では特集が組まれている。人気タレントがサポーターになって、これを見逃したら一生の損だと言わんばかりの宣伝がなされる。たいがいヨーロッパやアメリカの有名美術館の名前が入った展覧会です。大きな企業がスポンサーとなっていたりもします。さきほど紹介した瀬戸内海での展覧会も町おこしのために何度もテレビで取り上げられていました。もちろんそこには素晴らしい作品が展示されていることは間違いありません。しかし私が訪れた二つの美術館にもそれらに負けない世界的な名画があります。ただテレビで注目されていないだけです。ネット上で話題になっていないだけです。
 そしてこれは美術品に限りません。食べ物でも、友達でも、学校でも、夢でも。素晴らしいものはすでにそこにある。気付いていないだけです。
 皆さんは高校の3年間で様々なことを体験し、発見し、将来への道を切り拓いていきます。どんな道に進むのかすでに方向が定まっている人もいるでしょうが、多くの人はこれから見つけていくことになります。その時に、本当に自分の好きなことに出会ってほしい。そのためには流行に惑わされてはいけない。流行っているもの、有名なもの、人気があるもの、それらをまずよく味わって、自分の感性を磨くことは大切です。でもそこに留まっていては本当に自分の好きなことには巡り合えない。気付く力が試されます。心のアンテナを張り巡らして、いろんなことをキャッチしましょう。
 他の人が良いというものには敬意を払いましょう。でもそれは受け入れることとは違います。よく見て、よく味わって、自分の感性で判断してください。流行っているから好き。有名だから良い。それでは他人の人生を生きることになってしまいます。良い悪いの基準。好き嫌いの基準。それを自分の中に作ること。高校3年間の目標としてください。[挨拶部分は省略]

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