「イシーちゃん!就職決まったよぉ」かつて担任した学生が校長室に遊びに来てくれた。「おお、偉いじゃん。どこよ?」「へへ。電通なんだ」「すげー」
 確かに彼女は中学生の頃から感じが良くてまじめな生徒ではあったが、ズバ抜けて成績優秀とか積極的とかいうタイプでもなかった。この就職難の時代に立派なものである。ぐんぐんと実力をつけて、自分の道を切り拓いてきたのだろう。
 男子学生も一緒に来てくれた。担任をした子ではないが授業は持ったことがある。中学から大学までずっとラグビー部でがっちりした身体をしている。「あれ、お前ら付き合ってるわけ?」「違うよ。たまたまそこで会ったんだよ。オレも就職決まったんだ」「どこよ?」「えー。電通みたいなすごいところじゃないからなぁ」言いあぐんでいるから、聞いたことのない会社名が出てくるかと思ったら「全日空です。パイロットじゃないけど」「マジ?どこがすごくないんだよ」
 成城学園は幼稚園から大学までワンキャンパスなので、学内でかつて教えた子と時々すれ違う。他にも楽天だ、モンベルだと就職の結果が耳に入ってくる。
 成城大学は4学部と規模は小さいが、就職はなかなか頑張っている。キャリア支援の仕組みがしっかりしているのと、100年近くの伝統があるおかげだろう。各界の中枢で卒業生が活躍している。直接・間接にその影響は大きいだろう。就職率が高いだけでなく、放送、航空、広告など人気の業界に強いのも特徴だ。初等学校由来の、明るくて物怖じしない成城生の性質が社会人として生き抜く強みにもなっている。
 中高一貫校は普通、高校を出たときにどのような進学をしているかという点に注目が集まる。東大に何人入ったかということに価値を特化している学校も多い。しかし本校のような大学併設校はもうひとつの出口、すなわち大学卒業時の進路というところにも重要な着目点がある。早慶や明大のような大規模大学には数の上では負けてしまうのは当たり前だが、質の上では十分に肩を並べていけるはずだ。
 社会の中で生き生きと活躍できる人材を育てること。そして小さいことを逆手にとったアットホームな丁寧で親切なキャリア支援をこれからも続けていくこと。それが成城学園・成城大学の価値の一つではないかと考える。