中3で優勝したクラスと教員チームとの野球の試合なんていうのが、かつての校内大会後にはあった。今では考えられない。ちゃんと野球のルールを知っている生徒が9人そろうクラスがあるのだろうか。野球が校内大会の種目にならなくなってから随分になる。かつては女子がソフトボールを種目にしていたこともある。基本的には毎年自治会で話し合って決めるのだが、校内大会の種目も時代の流れで様々な変遷を遂げている。
 2020年のオリンピックで野球・ソフトは復活を目指していたが、本校の状況を見ても、やはり野球というのはなかなか万人にはやれないスポーツなのかもしれない。(残ることのできたレスリングが誰にでもやれるというわけではないが)野球はルールが複雑すぎる。動いていない時間が多すぎる。ピッチャーに加重の負担がかかりすぎる。校内大会にも確かに不向きであろう。そもそも今の子はキャッチボールの経験さえない場合が多い。
 今年中学校の野球部は軟式から硬式に切り替えたが、ますます専門化が進んでいくのだろう。
 校内大会では学校の授業で学んでいる競技が今の主流だ。ハンドボール、タグラグビー、ポートボールなどは世間じゃあまりメジャーでなくても、学校という世界では重宝されている。
 生徒の運動能力も変わってきた。小さい頃からスポーツをやっている子は多いのだが、早くから専門的になり、全体的にバランスの良い何でもこなせる万能選手は減った。それに当たり前のことができない子が増えたような気がする。小さい頃から、スイミングスクールだ、サッカーチームだ、フェンシングだとスポーツには馴染んでいるのだが、そういう子でも単純なでんぐり返しができなかったりする。何もない原っぱによって子どもが鍛えられた時代はもう東京では終わったのだ。空き地には頑丈な柵が張り巡らされている。
 それでも中3男子のハンドボールやバスケットボールなどを見物していると、なかなか楽しい。身体も大人並みに大きくなって筋力もついてくる。すばやい身のこなしや瞬間的な判断力も身につけている。いろんな体育系の行事や部活動で培った能力はほんとうにすばらしい。保護者の方にもっと見に来ていただきたい。自分の息子がこんな迫力ある動きをするとは、と驚かれるに違いない。

 中3の生徒と教員との試合ができなくなった原因がもうひとつある。教員が動けなくなったのだ。我が家の押し入れからは、かつて作った教員チームの野球やバレーボールのユニホームが掘り出せると思う。授業の空き時間にちょっとキャッチボールを、なんていう余裕がかつてはあった。それがキチンと生徒に還元されていたと思う。中学対高校の教員野球対抗戦をやってからもう7~8年経つだろうか。先生方。パソコンの前から離れて、また野球、やりましょうよ。