文化祭は「文化+祭り」ということで、アカデミックであり、騒がしくもある行事だが、成城学園の文化祭は明らかに後者の方に偏る傾向がある。教員内部でも変革を求める声があるのは事実だ。しかし実はけっこう私は好きなのである。一見バカ騒ぎに見える中にも、非日常の経験をたくさんしているのだと思いたい。ほとんどの生徒が何かに熱中する時間を持っているのではないか。
 映像の企画が何クラスかあったが、夏休み頃から撮影しはじめていたチームもある。桂組の作品のワンシーンにこんなのがあった。ベランダから投げたペットボトルが遠くを走る自転車のカゴに見事ストライク。これって何度も、たぶん何十回も挑戦して撮ったのだろう。
 食堂・売店も良かった。例えば柏組のお菓子屋さん。全国の都道府県の名物菓子を調べ、それを販売していた。新宿や銀座にある各県のアンテナショップに生徒たちが手分けして買いに行き、お店の人と相談しながら手に入れてきたという。
 部活動も頑張っていた。社会科同好会の発表。3年生二人は、どちらの発表が優れていたかを客に投票してもらうというシビアな企画だった。講堂では吹奏楽・バトン・ダンスなどおなじみの公演もおこなわれた。みんながそれぞれ自分のやりたいことを見つけ、熱中して取り組んでいたと思う。
 幼稚園から大学までの共通ポスターも今年は中3の女子生徒の作品だ。
 このように準備から片付けまで生徒はめいっぱい文化祭を楽しんだと思うが、その中で副校長として感謝をしたい企画がある。「学校紹介展」という恒例の企画だが、いつもだと教員主導でおこなっている。早い話、受験生獲得のための宣伝の場だ。展示の他に受験相談のブースもある。教師だけではつまらないので、生徒自治会の委員に毎年ブースに入ってもらっている。
 その話を知った委員のひとりO君が、プロモーションビデオの作成と当日の発表を自分たち生徒にやらせてくれないかと広報担当の教師に言いに来たのだ。許可するとO君は、パソコンや楽器の得意なA君とタッグを組んで素晴らしいビデオ作品を作ってくれた。企画・撮影・編集すべて二人がやってくれた。できあがった作品をチェックするために私も見たのだが、その時のO君の言葉は「今日はお時間をいただいてありがとうございます」だった。このセリフには「教師にやらされているのではない。自分たちが主体だ」という思いが無意識に込められていると感じた。
 文化祭当日は、ビデオ上映の後に、他の生徒も何人か加わり学校の様子をいろいろと話してくれた。これもまた素晴らしかった。1日1回しかやらなかったのはもったいなかったが、両日とも満員の大盛況だった。彼らを見ていると成城学園という場を堪能していることが伝わってくる。この学校が大好きだということが見えてくる。中1の頃のO君を知っている教師たちは「何でこの子こんなに立派になっちゃったんだろう」と首をかしげていた。生徒の成長に限界はない。