ラフティングや乗馬など、スポーツを中心に活動した日の翌日は打って変わって「労働」が待っていた。千歳市郊外の牧場や農園にお邪魔して、酪農・農業体験をおこなったのだ。朝からの雨も到着する頃にはすっかり上がって青空が覗いている。5月の北海道にしては暖かい。
 生徒たちを10軒の受け入れ先にバスで運んで行き、1日の仕事の手伝いをさせてもらうのだ。多い所では28人、少ない所では3人とアンバランスだが、それぞれのキャパに応じて預かっていただく。10時過ぎから16時過ぎまでの6時間ほどの体験学習だ。付き添いの数より受け入れ先の数の方が多いので、我々は1カ所に留まることはできない。昼食後に観光連盟の方のワゴン車に同乗して様子を見て回った。
 地味に間引き作業をしているグループ、せっせと牛小屋の掃除をしているグループ、作業の合間にトラクターの後ろに乗せてもらってビュンビュン走り回っているグループ、袋に牛のえさを小分けにしているグループ、お菓子をたくさんごちそうしてもらっているグループ・・・それぞれ充実した時間を過ごしていた。
 トマトの苗をひもで支柱に結びつけているグループはちょっとダラダラやっている。「おお、何だかサボってるなぁ」と声を掛けると照れたような笑いが返ってきた。すると農園のおばさんが「このハウスの支柱を全部立ててくれたんですよ。雨が降りそうだったからハウスの仕事を取っておいたんです」と教えてくれる。そりゃ疲れただろうな。ダラダラの理由がわかる。「この棒の上、全部結んだんだよ」良いぞ。もっと自慢しろ。かなり広いハウスには何十本もの支柱がキチンと立てられていた。大人の背よりも高い位置で3本の棒がひもで結ばれているから大変な作業だっただろう。この量を6人でやったのだから立派なものだ。
 知らない大人に指導されながら、その人たちの役に立とうとする。実際は邪魔でしかないのかもしれないが、それでも精一杯やった生徒には貴重な体験と満足感が得られたはずだ。そういうチャンスをつかむか、逃すか。そこに成長の鍵がある。
 1軒の牧場では北海道新聞の取材もあった。取材の申し込みがあったとき肖像権の問題があるので中学の事務室に電話をして確認したが、撮影を拒否しているメンバーが入っていなかったので了承した。「先生が到着してからにしますか?」と聞かれたが「どうぞ、ご自由に」と返事をした。こういうとき大概の学校では質問内容や生徒の人選などに気を遣うんだろうなぁ。生徒に任せておけば大丈夫っていう気持ちにさせてくれるのはありがたい。