REで始まる単語はたくさんある。RETURN・RECYCLE・REVENGEなどは日本語の中にも取り入れられるほどだ。それぞれ再訪・再利用・復讐などという訳語が当てられるだろうが、REには再びおこなったり、反復しておこなったりすることを示す役割がある。この反復というのは何かを身につけるためにはどうしても必要なものだ。「学びて時に之を習ふ」という孔子の言葉の通り、学んだだけでは理解は深まらない。繰り返し練習することによって、知識も技術も自分のものとなっていく。REは学習の基本のひとつなのだ。
 中学生ともなれば、その練習する部分は自分で何とかすべきなのだが、なかなかそうはならない。初等学校からやってきた生徒はテストに向けて勉強する習慣がないし、受験で入った生徒は塾に行くことが勉強だと思っている。それでもほとんどの生徒はだんだん慣れていって自分の学習スタイルを身につけていく。
 残念ながらいつまでたってもそれができない生徒も中にはいる。昨年度までは学習の十分でない生徒に対して、学期の成績が出てから講習をおこなってきた。次の学期で挽回しよう。そういうメッセージだった。それなりの効果はあったと思うが、テストが終わった直後の最も気の抜けた時期に実施することには常に疑義が出されていた。
 そこで今年度から定期テストの前に補習をおこなう方式に変えることにした。テストのある学科が心配な生徒を指名して放課後に勉強会を開くのだ。今週1週間おこなっている。5月の中間テストは年度のはじめなので、昨年度の学年成績から対象者を決めた学科が多いようだ。だから1年生はあまり指名されていない。
 テスト前に補習をするアイディアは前からあったのだが、二つの点で反対があった。ひとつは補習をアテにして授業をおろそかにする生徒が出るのではないかという心配。もうひとつは特定の生徒だけ指名してテスト前に補習することの不平等性だ。はじめの点については「学科が指名するのは授業中にキチンとやっているのに成績が振るわない生徒に限る」ことで、ふたつ目の点は「指名された生徒以外の生徒が自由に参加できる勉強会も同時期に置く」ことで解決することにした。個人的にはこういう「転ばぬ先の杖」はあまり好きではない。やってみて転んで、自分の力で立ち上がって、またやってみる。これが若い世代の特権だと思っている。しかし転びっぱなしの生徒を放っておくわけにもいかないというのが現実だ。
 この補習の期間を「R週間」と呼ぶことにした。Rは米語で復習という意味のREVIEWの頭文字だ。ちなみに英語ではREVISEが復習に当たるらしい。いずれにしても反復の「R」だ。しかしテストのための付け焼き刃に終わってしまっては意味がない。繰り返し繰り返し復習することで自分の勉強スタイルを発見させ、次は指名されないように指導していくことが肝要なのであーる。