毎年何人かの教育実習生が成城学園中学校にやってくる。大半が成城大学で教職課程を履修している学生たちだが、今年は中学1・2年生の時に私が担任をした学生が混じっていた。彼女は社会科・地歴公民科の免許取得を目指している。どこの学校でも卒業生が教育実習生として戻ってくることはあるだろうが、成城学園のようにワンキャンパスにすべて収まっていると、成長が常に身近にとらえられて感慨深い。ついこないだまで校庭をキャーピー走り回っていた少女が、黒いスーツに身を包み、日露戦争について語っている姿を見ると、時が過ぎていくことの不思議さを実感せざるを得ない。

 土曜日に中・高・大の女子サッカー部が合同で試合形式の朝練をやるのだが、たまに私もそれに混ぜてもらうことがある。この実習に来た学生もしばらくの間、女子サッカー部に在籍していたので、そこで顔を会わせることもよくあった。

 彼らの学年の成人パーティーにも出席した。校長室にその時の写真が飾ってある。そうやって卒業生が成長していく様子を眺められるのもこの学校の良い所なのだろう。生徒・学生たちの方も「自分の居場所」としての暖かさを感じてくれているようだ。

 彼らは中学生の頃、私を「イシーちゃん」と呼んでいたが、彼女から受け取ったお礼状は「秋涼の候、石井先生におかれましては・・・」で始まっていた。「あーあ、オレはもう元担任ではなくて、実習校の副校長かぁ」。子供が大人になるということはちょっぴり寂しいことでもあるようだ。