雑誌の取材にいらした方が「放課後にこんなにたくさん生徒が校庭で遊んでいる中学校は見たことない」とおっしゃっていた。また「その上、ボール遊びをしている横で絵を描いている生徒までいるというのには驚いた」とも。カメラマンは「良い写真が撮れました」と木漏れ日の中で写生する少女の横顔を見せて下さった。

 こちらとしてはあまりに当たり前の風景なので、全く意識していなかったが、確かに人工芝の上には、イーゼルを立てて風景画を仕上げている生徒が何人か座っていた。しかも彼らは美術部員やイラスト研究会のメンバーというわけでもない。授業で制作している作品をより良いものにしようと放課後に取り組んでいるのだ。学期末が近づいてくると、美術や家庭科で居残って作業をしていく生徒の姿が目につくようになる。授業中にボンヤリしていて間に合わなくなった生徒ももちろんいるのだが、納得できるまで仕上げたいという気持ちでプラスαを目指している生徒も大勢いる。
 学期が終わるときに渡す成績表は左から国・社・数・・・といわゆるペーパーテストをやる科目が並び、真ん中あたりに保健体育があり、右側に音・美・書・技家と実技系の科目が記載されている。成城学園だけではなく多くの学校でそうなっているだろう。
 学校ではどうしても左側の科目が重視される。授業時間も多いし、教員の数も多い。成城学園でも「国・数・英」を基軸教科などと呼ぶことがある。学校という社会でうまくやっていくには左側に力を注がなくてはならないのは言うまでもない。ものごとを認識する、分析する、推理するなどの基本的な能力もこれらの学習を通して培われていく。
 しかし、人の一生を考えたとき、歌ったり、絵を楽しんだり、料理をしたり、ジョギングをしたりということの方が日常生活と直結している。二次方程式より金槌で釘を打つ方が大抵の人には身近だろう。人生を豊かにするのは成績表の右側なのだ。成城学園中学校は成績表の右側にも力を入れる学校であり続けたい。

 期末テストが近づいている。ようやく生徒たちの意識も成績表の左側に向き始めている。