成城学園中学校には中3で国語Ⅱという週2時間の科目がある。古典・文法などの知識面と入試問題に挑戦する演習とで成り立っている。私は今年その国語Ⅱを受け持っているのだが、ついこの間、演習のテキストに掲載されている日高敏隆氏の文章を使って授業を行った。
 動物に興味のある方は日高氏の名前はご存知だと思うが、日本の動物行動学の第一人者である。京都大学に長くお勤めだったと思うが、素人にわかりやすく書かれた著作も多く、私も数冊読んだことがある。
 日高氏は旧制の成城高校(現成城大学)の出身である。動物学の勉強のために東大に移られたそうだが、当時の成城というのは本当に優秀な方がたくさんいらしたようだ。指揮者の小澤征爾氏も成城の出身だが、在籍されていたラグビー部の試合などにはいまだに顔を出されることがある。小澤氏も成城学園高校から音楽のために桐朋へと移られたそうだ。

 こういう巨人を輩出してきた環境は今の成城学園にも受け継がれていると私は感じている。それは簡単に言えば「型にはめない」教育、「可能性を広げる」教育、「邪魔をしない」教育を何となくやっているということだ。「何となく」というのは威勢が良くないように聞こえるだろうが、実はこれが大事だ。それを当たり前のこととしてとらえていることの証だからだ。自然にそうなっているのだ。大人の都合、学校の都合、教師の都合で生徒が育っていく邪魔をすることがないようにこれからも無意識であるかのごとく続けていきたい。
 学園高校から大学に進学する際、成城大学への推薦権を保持したまま、どの他大学でも受験できるような併願制度を持っている。これもまた「邪魔をしない」教育の具現化である。
 「日高敏隆ってキミたちの先輩なんだぜ」と授業で紹介したが、生徒たちは「ふ~ん」って顔をしただけだった。