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  • 2015.03.20

    特別編 石井校長 出たとこ勝負② 中学校卒業式祝辞

    出たとこ勝負

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[挨拶部分は省略]

 私がキミたちの年齢だったころ、消費税はありませんでした。そういう意味では当時の子供というのは、社会から切り離された、大人になるための純粋な準備期間だったとも言えます。今キミたちは何かを買う時に、知らず知らずのうちに税金を払っています。もちろん実際はお父さん・お母さんが稼いだお金を、キミたちが代わりに使っているだけなのですが、それでもキミたちは消費税という形で社会にいつのまにか参加させられることになっているのです。
 いま国会で審議されようとしている、ある法案があります。それは選挙権をこれまでの20歳からという制限ではなく、18歳に引き下げようというものです。多くの政党がすでに賛成を表明しているので、おそらく成立するでしょう。そうなるとキミたちは成人になる前にさらにまた社会に大きく参加することになるわけです。私の世代の人間より、早く社会人になることが求められているのです。

 日本はいま自由の国です。経済も大きく発展し豊かな社会を築いています。
 今日、何を食べるのも自由です。夏休みに海外旅行に出かけることもできます。努力をすれば将来どんな職業にも就けます。これらの自由を支えているのが民主主義という制度です。国民の望むことが社会に反映できるしくみです。民主主義によって自由や豊かさは守られているのです。そしてその民主主義は選挙という方法によって維持されています。選挙がなくなれば、自由はなくなります。それほど大事なものです。
 ところが残念なことに選挙の投票率はたいがい低い。中でも若者の投票率はひどいものです。
 先日の衆議院選挙の後、テレビのニュースで、投票しなかった人へのインタビューが放送されていました。その中で次のような理由を述べている人がいました。それは「いい加減な考えで投票してはいけないと思ったから」というものです。あたかも誠実な意見のように聞こえますが、私には言い訳としか思えません。もちろん政治の世界で起きている全てのことを把握するのは無理でしょう。でも選挙は普通の国民が住みやすい社会を作るために行うものです。政治の専門家のためのものではありません。
 これまで中学校で学んできたもの、これから高校で学ぶこと。エネルギーのこと、平和のこと、教育のこと、お金のこと、善悪のこと。それらの知識や思いを総動員して誰に投票すべきなのか、考えなくてはいけません。キミたちはそのために学んでいると言っても間違いではない。中学校には社会科という科目がありましたね。そこで選挙の仕組みなどについても学んだと思います。高校に社会科はありません。地歴公民科と言います。地理と歴史と公民ということです。この公民というのが政治や経済について勉強する科目です。しっかり学んで下さい。
 私が子供のころ払う必要のなかった税金をキミたちは支払う義務を負ってきました。そして今度は私が18歳の時には持っていなかった投票の権利を手にすることができます。キミたちの一票はお父さんの一票ともお母さんの一票とも同じ重さを持っています。ぜひその権利を使ってください。その日はすぐにやってきます。

 自分個人の未来は自分で決めますよね。どの大学に行くのか。どんな仕事をするのか。誰と結婚するのか。それと同じです。人間はひとりでは生きていけません。社会の中で生きています。自分がどういう社会で生きていきたいのか。社会の未来を決めるのもキミたち自身なのです。
 成城学園中学校で学んだキミたちにはすでにそれを判断する知性があります。人を思いやる優しい感性があります。そういう人間に成長したはずです。18歳まであと3年。今度は広い視野を持った社会性を身に着けなくてはなりません。未来の社会をキミたちに任せます。

[後略]