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  • 2025.11.21

    副校長ブログ「ゆめみる」第53号 『夜の学校にて』

筆者は夏よりも冬がいいと思う。こと近年の夏の暑さは本当に耐えられない。汗っかき体質(体型?)であればなおさらである。
そうした個人的な感覚はさておき、学校で過ごしていても冬がいいと思う。1/31のブログをご覧いただければと思うが、空気が澄み、日が短いこの季節は本当に気持ちいい。生徒の下校時刻である18時にはすでに日が暮れ、校内を巡回していると東棟からも西棟からも、見事な夕景を望むことができる。

筆者が成城学園に就職したころ、現在の大学9号館は中学校の第二校舎で、あの一角が中学校の敷地だった。ちょうど秋の文化祭の時期、就職したばかりの私は先輩の先生から声をかけられ、文化祭の教員企画を手伝った。文化祭直前は学校を出るのが10時近くになることもしばしばだった。

昔の建物だからかもしれないが、照明のスイッチが、長い廊下の真ん中にあった。教室の明かりを消してドアを施錠し、職員室がある本校舎に戻るには、真ん中のスイッチを消したあと真っ暗な廊下を端っこまで歩かなければならない。埃をかぶった火災報知器の赤いランプ、非常口の色褪せた緑色の灯りがぼ~っと光る、無音の夜の学校の廊下…。
そこには、「出る」とうわさがあった非常階段への扉があった。外にあった階段だったが、夕暮れになると「カン、カン」と鉄の階段を何者かが歩く足音が聞こえるのだという。そのいわくつきの階段の入り口ドアの前を通らないと、職員室がある本校舎にはたどり着けない。大人といえどもまだ20代の新人教師、そこを通るのが怖かった。

それに比べると、現在の校舎はいい。廊下は夜間であっても防犯用の照明が点灯していて、階段は人感センサーで照明がつく。ガラスが大きく、外の光も入ってくるため、あまり怖さは感じない。

夜の学校には人の心を解放する空気がある。2学期は飛翔祭にせよ、つい先日終わった文化祭にせよ、生徒が遅くまで準備をする姿が見られ、本当に清々しい気持ちになる。ブログでもよく紹介しているが、現在の高3の代は、筆者が副校長になる前に中学の3年間を担任した代。この2学期、彼らが最上級生として学校を引っ張る姿をあちこちで見てきた。中高一貫の学校の良さというのはこういうところにもあるのだろう。教師と生徒とがお互いに長い時間を共有できることは、少なくとも教師にとって冥利に尽きるものだ。

私ごとになるが、この10月3日に、愛犬を亡くした。18歳8か月だった。一人娘の妹のように、ずっと一緒に過ごしてきた、大切な、ほんとうに大切な家族だった。愛犬が生まれた2007年は、今の高3が生まれた年。亡くした愛犬と高3の姿がかぶって見え、私の中で深い感慨と悲嘆が交錯する。

こんなことをブログに書こうと思ったのも、夜の学校のせいだろう。死んだ愛犬と同じ歳の、6年かかわってきた生徒たちが夜遅くまで笑いあい、語り合い、行事の成功のために頑張る姿を応援することが、愛犬への「ありがとう」という感謝と愛情へとつながっているような気がする。
愛犬とのたくさんの写真や動画をたどりながら、「なな」は幸せだったんだろうか、と込み上げてくる感情をおぼえる。私たち家族にこんなにも大きな愛と幸せを与えてくれた、小さな「なな」だったが、彼女の一生も毎日が楽しく幸せなものだったと信じたい。

高3の生徒たちの未来が多くの愛情にあふれ、彼らが関わる人々にたくさんの幸せを与えられる人生であらんことを…と思いがこみ上げる、夜の学校である。

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