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  • 2025.10.24

    副校長ブログ「ゆめみる」第51号 『地下1階』

先日、初等学校父母の会の機関紙である『成城っ子』の取材を受けた。中高についての説明と質疑応答のあと、「文化祭の時に入ったことがあるぐらい」との編集担当のお母さま方のリクエストもあって、中高の校舎を案内した。その時、編集長の方から「中高校舎でいちばん特色ある場所は?」と聞かれ「地下1階」とお答えしたので、このブログでも久しぶりに中高校舎のことを紹介してみたい。

現在の中高一貫校舎は2016年春に竣工、今年でちょうど10年目を迎えた。その4年半ほど前から新校舎建築についての議論が始められ、筆者はその立ち上げ時から関わってきた。他校の校舎を十数校見学する中で、ひとつ特徴的だったのが「図書室の場所」だった。ある学校では最上階の端っこに、ある学校では玄関を入った正面に配置されていた。そこに、当時校舎建築専門部会のチーフであった前中高校長の想いも加わり、「図書室を生徒が気軽に利用できる場所にしたい。そのために生徒が多く集まるだろうカフェテリアの隣に配置する」という方向性が決まっていった。現在の校舎の配置(東西棟2つの教室棟を地下1階の共有エリアでつなぐ)が決まると、その地下1階を「多くの生徒が集い、図書室を中心に学びあいができる“知の中枢”」と位置付けることになった。
またこの地下1階はもともと斜面だった場所につくられたこともあり、西側は斜面に食い込む形で001教室(小講堂)が、一方の東側は地上のグラウンドに面し、階高も5メートルという明るく開放的な空間になっている。学校説明会の際の校舎見学でも、「広くて明るい」「きれいですね」との声を多くいただいている。

当時は生徒たちの学びあいやActive Learningの必要性がいわれるようになり、TSUTAYA図書館に見られるようなカフェと図書館の融合も話題になっていた。議論の過程では、コリドーと名付けた大空間をど真ん中に、カフェと図書室、PC教室をオープンスペースに配し、さらに001教室も加えた、多目的かつ多用途に利用できる空間を構想したこともあった。お茶しながら勉強を教えあい、ごはんを食べながらチームで議論してプレゼンをつくり、図書室の自習スペースで静かに勉強する者もいる…、と。
さらには当時の校長から「その図書室と職員室を直接つなぐ動線もつくったらどうか」という知恵が出され、地下1階の図書室とその上階にある職員室をつなぐ螺旋階段の設置も決まった。
中学生と高校生の境なく、学びと笑い声にあふれた地下1階の様子が、校舎建築に関わったすべてのスタッフの目に思い描かれていた…。

さて、10年経った現在はどうか。図書室では受験を控えた高校生が自習ブースで日々勉強する光景が見られ、定期試験前にはコリドーに置かれたテーブルで生徒たちが勉強を教えあっている。カフェテリアは定期試験前1週間放課後も営業し、アイスクリームやフランクフルト、ホットケーキなど軽食が提供され、生徒たちは思い思いに昼休みや放課後を過ごす空間になっている。
これまでのブログでも紹介したが、コリドーでは文化部の活動展や中3の選択授業展に加え、雨天時や暑熱対応時には体育の授業も行われている。「地下1階」の可能性はまだまだひろがると思うが、生徒の活動の中枢として大きな役割を果たしている。

当時「成城学園第2世紀」、つまり「次の100年に耐えうる校舎を」ということで、校舎建築にあたった専門部会のメンバーは多く議論を交わし、色々知恵を出しあった。最近でも、都内各地の私立学校で新校舎の建築が進められているが、成城学園中高の校舎は、10年経った今でも輝き続けていると思う。さて、みなさんはどうご覧になるだろう。

  • 多用途に利用されているコリドー
    多用途に利用されているコリドー

  • コリドーの木積層壁には教室階天井の世界の名言が降り積もる
    コリドーの木積層壁には教室階天井の世界の名言が降り積もる

  • 左側が図書室、右側がカフェ入り口
    左側が図書室、右側がカフェ入り口

  • 図書室前には8mに及ぶ吹き抜け
    図書室前には8mに及ぶ吹き抜け

  • 開放的な窓にグラウンドの緑が広がる自習カウンター
    開放的な窓にグラウンドの緑が広がる自習カウンター

  • 職員室直結の図書室内の階段
    職員室直結の図書室内の階段

  • 図書室奥の自習室
    図書室奥の自習室

  • ドアを開けると図書室とカフェが直結
    ドアを開けると図書室とカフェが直結

  • 360席あるカフェテリア
    360席あるカフェテリア

  • 中学生も高校生も利用できる
    中学生も高校生も利用できる

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