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2025.07.04
この頃生活部では、「自治自律」という学校のあり方の実を高めていこうということで、生徒会と連携しつついくつかの「試み」を始めている。
まず、タイトルにもある「ノーチャイムデー」。文字通り「チャイムを鳴らさない日」である。ルーズな生徒達に時間をしっかり意識してもらおうという意図で、3日間に限って試行されたものだが、先日ランチミーティングにやってきた生徒からこんな声を聞いた。
「ノーチャイムデーって誰が言い出したんですか?授業にやってきた先生はみんなノーチャイムに反対って言ってますよ。終わりの時間のチャイムが鳴らないって、授業する先生にとってはストレスじゃないんですか?」と。
時間にルーズな生徒からすれば、そもそもチャイムがあってもルーズなわけで、時間をちゃんと意識して諸々管理しなければならない教員だからこそ、時間の区切りが明確に示されないことはストレスであると…。
ちなみに筆者はだいたい腕時計をつけているが、つけていない時には時計の対面に座っている生徒に「あと何分?」と聞いて、ちょうどいい区切りで授業を終えられるように気を付けている。33年も50分授業に縛られていると体内時計も育っていて、短縮授業の日など普段と異なるタイミングでチャイムが鳴ると「えっ?もう終わり??」と身体が反応する。もちろん教員もそれぞれなので一概には言えないが、「ノーチャイム」のハードルは意外と高そうだ。生活部の“敵”は、“身内”かもしれない。
もう一つ、男子の夏服に「ハーフパンツ」の導入を試行している。本校は女子には所定の制服がなく、襟と袖があるシャツを着用することと、下はスカートでもスラックスでもいいという程度の決まりがあるだけ。創立当時から、男子は「紳士たれ」ということで学校指定の制服が決められたが、女子は「自分に相応しい身なりを整えられる女性であってほしい」ということで制服はつくられないで来たようだ。
そもそも男子と女子とで制服の規定が違うということ自体、今の時代から見れば旧態依然としたものだが、これまでも生徒との話し合いの中で何度か制服の話題は出つつも、女子に制服をつくるということも、男子の制服をなくすということも、生徒の中ですら現状維持派が多い状況があった。
そんな中で、昨今のジェンダーフリーの社会状況から、女子のスラックス着用が施行期を経てOKとなり、夏の酷暑対応にということで、今回男子のハーフパンツ着用を夏服として認めていこうという流れになっている。とはいえ、教室の掲示には「デザインは無地」「色は黒、濃紺、グレー、茶、ベージュ」「長さは膝丈」…と、多くの制限が。もともと制服が決められている男子に対する試行なので、ほぼ何の規定もない女子と比べると色々と定めざるを得ないというわけだ。
筆者の通勤中、よく他の私立中高の生徒を見かけるが、ネクタイのデザインから指定のリュック、制服にデザインされた学校のロゴに至るまで、しょっちゅう変わっている学校がある。その都度、全員に新しいものを買わせているのだろう、生徒たちはみな同じものを身につけている。うちの学校のように「試行」から始まって、生徒や教員がああだこうだ言いながら決めている私学は少数派なのだろうか。でも、私学の個性とは「誰かがトップダウンで決める」個性だけではなく、「やってみてみんなで考える」という個性もあっていい。
成城学園に就職した当時の校長の話を、私は今でも忘れない。「『赤く咲くのはけしの花 白く咲くのは百合の花 どう咲きゃいいのさこの私…』という歌謡曲がある。「こう咲きたい」という個性はもちろんあるだろうが、「私、どう咲きゃいいの…」と迷い悩んでいることだって個性なはず。成城学園はそういう個性も尊重する学校なのだ」と。決まった方針やレールの上を走らせるのではなく、思い悩む生徒に寄り添いともに悩んであげる学校が成城学園なのだという。その先生は、教師こそ決まった形を作らず、アメーバのように生徒によってどんな風にでも形を変えられる存在でなければ、生徒には寄り添えないとも教えてくれた。「個性尊重」の学校ゆえの教師観である。
「ノーチャイムデー」「男子のハーフパンツ」が定着するのかしないのか、これから教員や生徒の様子や声を聞きながら、議論して決めていくことになる。
成城学園はそんな学校である。