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2025.06.20
教育、というか学校の世界には、一般的にはあまり聞き慣れないコトバがある。
たとえば「中1ギャップ」。筆者はこの4月に新中1の生徒たちを前に集会で話す機会があったが、「中1ギャップ」というコトバを知っている生徒は、当事者であるはずの生徒の中にもほとんどいなかった。
想像はつくだろうが、小学校とは大きく異なる中学校生活への戸惑いによって、うまく対応できない子どもたちが不安定な傾向になることを言う。中学受験を経て通学環境が大きく変化したことや、本格的にはじまったクラブ活動によって成長途上の変化の大きい身体にさらに負荷がかかり、それが心身の不安定さや問題行動のひとつの原因になることもある。
では「魔の6月」とは何か。6月は色々な意味で警戒すべき「魔」が頭をもたげる時期だというのだ。
まず、入学やクラス替えによる新たな人間関係に緊張していた4・5月が終わり、生徒の気が緩む時期になる。友人関係の再構築がはじまるのもこの時期。緊張感から解き放たれた男子の中には、大声をあげるようになったり粗暴な傾向を帯びる者も出始める。他の子に対して自分の優位性を見せようとする、いわゆる「マウントをとる」行動をとる子も見え始める。女子は、4月に当座つくられたグループが再編されはじめ、その中で「はぶり、はぶかれ」ということが起きる。その対象が順繰りで代わっていくことも多く、被害者と加害者が見えにくい状況も生まれる。そうした動きが、「いじめ」に発展することもあるし、そうした変化に対応できない子は学校を楽しめなくなり、不登校になってしまうこともある。
本校では5月末にフレンドシップデーと銘打って遠足や球技大会を入れ、文字通り交友関係を深めるための仕掛けを行っているが、いい方向に向かうこともあれば、そこでのやり取りによって逆に「再編」に火が付くこともある。大人になっても人間関係が移ろうのは当然のことで、そういう経験値を積むことは悪くないとはいえ、中高生にはそれがかなり過酷な状況であるというわけだ。
次に教員の側。こちらも、4月~5月は、新たな担任に入ったり授業の持ちも変わったりで、あらたな緊張が連続する。それが6月になると、蓄積した疲労が出始め、方々で出始める生徒の変化とも相まって気持ちに余裕が持てなくなる。さらにそういう時に、子どもの変化に困惑した保護者からの担任への相談も増え、今度は担任が参ってしまうことになる。
6月の「梅雨」の天候もよくない。生徒たちは思いっきり外で遊ぶ…つまり発散の機会も雨のために奪われるし、教員もじめじめした蒸し暑さで体調を崩しがちになる。
このブログでも以前「ラウンジ」の話を紹介したが(第31号)、6月のこの頃は業間の休み時間このラウンジが生徒であふれ、キャスター付きの椅子で遊び始める。テレビモニターも置いてある部屋なので注意せざるを得ないが、かといって、「外は雨だしなぁ…」となる。
「魔の6月」。言われてみればそうだな…と納得していただく読者の方も多いのではないか。学校としては、そうした状況をいかに「穏やかに」「緩やかに」過ごさせるか、ということが課題になるわけだが、本校では「まずこの時期はそういう時期である」ということを教員間で共有することから始めて、5月20日~23日に実施された中間テストの結果が出たこともあり、生徒との個別面談をしっかり実施することにしている。
やはり生徒としっかり話す機会を持ち、生徒を見守ることで、彼らの変化に対応しつつ、教員の側にも内にモヤモヤをため込まないようにすることが大切なのだろう。同じことはこの時期の子どもに接する親にも言えることかもしれない。
この頃ブログに写真を入れる頻度が少なくなっているかな…と思い、周辺を散策し紫陽花を撮影してきた。紫陽花はその色によって花言葉は違うようだが、紫陽花全体の花言葉は「移ろい」だそう。今日のブログの話をうまく収めてくれる写真になるだろうか。
西棟と芸術棟Ⅰの間に咲く紫陽花
鮮やかな赤紫色が美しい
さまざまな色合いを見せる
とある先生が見つけてくれたセミの幼虫