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  • 2025.06.06

    副校長ブログ「ゆめみる」第44号 『父母の会』

父母の会とは公立の学校でいうところのPTAのような組織だが、PTAとはちがって父母の会は学校からは独立した組織であり、「学校法人成城学園の教育に協力するとともに、学園教職員と会員、および会員相互の親睦をはかることを目的とする」とされている。筆者は副校長職を務める前、総務部長という、父母の会と学校側をつなぐ窓口の役職を長く務めてきた。歴代の部会長さんにも多くお世話になったし、役職をこえた親交もあった。

ちょうどコロナ禍が日本にやってきた冬、筆者はその任にあり、父母の会主催の卒業パーティーや卒業式自体のあり方について、高3と中3の役員さんと幾度となく対応を協議した。結局卒業式は保護者の参加が取りやめとなり、各教室で担任から証書を渡すのみの会となった。中高それぞれにずっと構想を練ってきていただいた卒業パーティーも中止になってしまい、未曽有のコロナ禍への対応に部会長さんはじめ皆さんとてもご苦労されていたことを憶えている。

そんな中、筆者が「チーム茶話会」と勝手に命名した中3の協議員さん方がいた。各クラスの役員さんの中の一人が協議員というクラス代表の立場となり、中3は卒業関連のパーティーやグッズ、動画作成などを生徒の卒業委員と一緒につくりあげる、大変な役をこなされていた。3月が近づくと毎週のように父母の会室で会合を持たれていて、総務部長の私がその会に呼ばれることも多かった。

そこではもちろん決め事も議論するのだが、お母さま方が集まる会、持ち寄った茶菓子とコーヒーがいつも用意され、話し合いは笑顔の絶えない和気あいあいとしたものだった。部会長さんの人柄もあったのかもしれないが、筆者はその会の雰囲気が好きで、大変な時ではあれど子どもたちに向ける母の想いを共有する雰囲気がとてもうれしく、その「茶話会」のひと時がとても楽しみになっていった。
みなさんにはそんな筆者のことも歓迎してもらい、後日「解散会」にも呼んでいただいた。そこでいただいたのが、「みんなで作ったんですよ!」という「Team茶話会」のロゴと、それぞれのメンバーの名前がプリントされたマグカップだった。もったいなくて使うこともできず、今も食器棚に大切に飾ってある。

成城学園では子ども・保護者・教職員の「三位一体の教育」とよく言われるが、中高ともなると子供の成長もあり、そう何度も保護者が学校に足を運ぶことはない。ただ役員さんになると学校に来る機会も増え、担任だけではなく、われわれのような校長・部長と呼ばれる教員との接点も増える。「意見交換会」という学校と協議員さんとの会も年に一度開催されている。

昨年度の高校の部会長さんがこんな話をされていた。
「…コロナがあり、個人の主義や主張が強くなり過ぎてしまい、本来の人とのつながりが弱くなってしまったことはとても残念で、成城学園らしくないと思っていました。保護者の皆さんが仲良く、楽しく活動をして、何かあった時は質問や相談し合え、助け合えたりするような温かい関係を父母の会を通して築いていただけたら…と思っているんです」と。

PTAにかかわっては、その負担感からか全国で解散の動きや活動の縮小などの動きが進んでいると聞く。それぞれに事情もあり一概にどうこう言うことはできないが、この部会長さんの想いを改めて噛みしめたい。「成城ファミリー」とも呼ばれる温かい学園の雰囲気は、こうした父母の会の活動にも支えられて守られてきた。時代とともにあり方は変わっていくのだろうが、学園の教育や校風を選んで入学された方々で構成されるのが私学。その私学の良さは、一体感であり、温かさであり、ふるさとのような感覚にあるのだろうと筆者は考えている。
これからはどんどん子どもも少なくなっていく。子育ての経験の蓄積が家族の中でも地域の中でも薄れていく中、父母の会のあり方は、私学に学ぶ保護者同士のひとつのあり方を提起しているように思う。

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