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  • 2025.02.28

    副校長ブログ「ゆめみる」第38号 『ゼミナールという授業』

2月22日、高2で実施している「ゼミナール」という授業が最終回を迎えた。
この授業は、文科省がほぼ10年ごとに改訂している「学習指導要領」に準じて本校でもカリキュラム改訂が行われた結果、昨年度から新設された。

成城学園高校では長く「自由研究」という授業が高2と高3に置かれ、「課外教室」とともに本校の特色のひとつだった。そこには主に成城大学進学者向けに教養講座的な授業が並び、「TOEFL対策講座」「デザイン思考で未来を創る」といった学習・キャリアアップ的な講座もあれば、「陶芸」「映画を観る」「体感!FootBall!!」といった趣味・運動系の講座もあった。それを発展的にリメイクしたのが「ゼミナール」である。

筆者はこの1年間、ゼミナールを担当してきた。授業は、探究学習の支援を扱っている外部業者に一部を委託し、そこから現役の大学生を派遣してもらいながら進められる。
まずは自分の興味関心はどこにあるのか「テーマ探し」から始まり、その中から「絞り込み」、そのテーマの「掘り下げ方」、具体的な「調査の進め方」など、毎回の授業の中でワークシートを完成させる形で進んでいく。時にグループの中で紹介しあったり、時にオンライン上で大学生からメンタリング(対話による気づき)を受けたりと、いわゆる「授業」とは全く異なる形態をとる。どのようなテーマにするかはそれぞれの自由で、自分の興味や関心を深めつつ、思考を具体化する方法論を身につけていく。

授業を担当する教員は、進行役の学生と同様、生徒の間をまわりながら、彼らの活動を手伝うファシリテーター(支援者)に徹する。Googleformを使ったアンケートを同学年の生徒から取って意識調査や実態調査をするなど、ICTを駆使した手法がとれるのもこの授業の面白いところだ。

2月はそうした活動の集大成として、クラスごとにひとり5分間のプレゼンテーションを実施、質疑応答も行い、大学生からのコメントをもらう。そうして生徒の投票も加味しながらクラス代表者が選出され、先日の最後の授業で、全員でクラス代表者8名のプレゼンを聞きあう「最終プレゼン大会」が行われたというわけだ。

今年度は金賞に『日本の伝統文化を後世に残していくためには』の大安楓君が選ばれ、銀賞には『ボランティアに関する日本と海外との違い』の吉田奈央さん、『色覚多様性者が気軽に焼肉屋を利用するには』の髙田奈緒美さんが選ばれた。

銀賞を受賞した髙田さんは筆者のクラスの代表。ゆえにちょっと詳しく知っているので、彼女の探究活動を紹介したい。
彼女の探究活動は、ある特定の色が見えづらい人にとって焼肉の焼け具合を判断するのが難しいという実態を知り、色彩のデザインで色覚多様性者のストレスを軽減したいという社会課題の解決を目指したものだった。彼女は先行研究から同じ色でも明度や配置によって色覚多様性者が見やすい工夫があることを知り、自らも、アプリを使用して実際に肉を焼き、「焼肉シート」といういい具合に焼けた焼肉の色覚サンプルを考案して、その2つをアプリ上で見比べながら焼くことで、ベストな焼き具合で食べられることを見つけ出した。その「焼肉シート」の裏にはその肉のおいしい食べ方が紹介されていて、とてもユニークだ。

発表した8人のテーマがバラエティーに富んでいて、本当に面白かった。と同時に、普段限られた「教科」の枠の中でしか行っていない学習活動が、その枠を取り払うことで生徒の可能性を無限に拡大できるものであることを改めて見せつけられた。

文科省の学習指導要領の改訂のポイントは、「主体的・対話的で深い学び」を目指すというもの。高3でもゼミナールを選択する生徒は、さらにそのテーマを深め、最終的に卒業論文まで持っていくことになる。当然、自分の興味関心を深める愉しさとともに、卒業の先にある進路についても、大きな手助けになる。

「学び」の可能性は、本当に大きい。

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