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  • 2025.01.17

    副校長ブログ「ゆめみる」第35号 『コンポスト』

先日、高2のある生徒が筆者を訪ねてきた。
「環境問題」や「ゴミ問題」に関心があるのだという。その生徒は秋になると学園内に降り積もる「落ち葉」を見て、その処理方法に興味があるのだと話してくれた。
「ゴミ袋に入れて捨てるとそれはゴミになり、ゴミを増やしたり処理費用がかさんだりすることになる。それよりもそのまま土に埋めて自然に帰せば、腐葉土となり有効活用できるのではないか」と。

はじめは高2と高3で実施している「ゼミナール」という探究活動の中でそういうことをしているのかと思ったのだが、話を聞いているとそうでもなく、彼女は自宅でもプランターで「コンポスト」をつくってみたりしているのだという。「けっこう時間もかかるし、なかなか難しいんですよ…」と教えてくれた。
「コンポスト」とは、家庭から出る生ごみや落ち葉などを発酵させ、堆肥をつくることなのだそうだ。恥ずかしながら筆者はその語を知らなかったが、彼女は毎年山のように出る学園内の落ち葉を何とか有効活用できないかとずっと思っていたのだという。

私から事務長に相談し、学園の清掃をお願いしている業者さんと彼女を繋いであげた。あいにく私はスキー学校の最中で彼女の取材活動に同行できなかったが、彼女はその取材のために説明用のスライドを用意して自分の考えややりたいことをまとめ、業者さんに披露したのだという。

冬休みも終わりに近づいた後日、彼女からメールが届いた。

「お疲れ様です。昨日お話を聞いてきたのでご報告です!聞くところによると20年ほど前にもコンポストを設置していたようで文化祭の時に腐葉土を販売していたそうです。ただコンポストに興味のある先生や用務の方がいなくなってしまったのを機にその流れが途絶えたようです。
もしコンポストを再開しようとした場合、契約的に用務の方に全てをお願いするのは難しいかもしれないと伺いましたが、落ち葉を入れるだけなら問題ないかもしれないということでした。ただそれを混ぜる作業が必要になるためボランティアでそれを行える人を集められるといいねという話も出ました。
事務長さんは昔の活動をよく思っていたらしく、昔は子供達が腐葉土からカブトムシを取ったりして楽しんでいたという話も聞けました。自然に親しむという意味でも学校の校風に合っていると思うので、個人的には人手やコンポストを置く場所の問題などを考えた上で再開に向けた動きができたらいいなと思いました。」

彼女の中学時分に授業を担当していたのでもちろん知らない生徒ではなかったが、そういう問題意識をもち、自分一人でも何か行動したいという姿勢に感服したと同時に、そういう行動を何気なくやってのける姿はとても誇らしかった。
彼女の問題意識は、この自然豊かな学園であればこそ芽生えたものであったろうし、そういう問題意識に、事務室の職員や清掃業者さんまでが時間を惜しまず対応していただいたのも非常にありがたかった。

2学期、成城学園でも数回の学校説明会を実施したが、高校の説明会の時に登壇した生徒がこんなことを言っていた。「授業以外の場でも、自分がやりたいと思えるようないろんな機会を与えてくれるのが成城学園です!」と。
その時は、課外教室やSAILという希望参加制の校外学習プログラムを紹介していた中でのコメントだったと記憶している。他にも中3でのオーストラリア留学にかかわっての「セカクル」という早稲田大学を中心とした留学生との交流会や、本校のネイティヴの教員との放課後英会話教室も開設されている。

「あれをやりなさい」「これをやりなさい」と指示され続けながらの学習ではなく、既定のレールと違う場にこそ成城学園の「学び」の特色があるのだというその生徒の話に、なるほどと改めて感じた筆者だった。

「コンポスト」の生徒はまだ高2。
静かな水面に大きな波紋を生むのも、もとはたった一つの小石。
彼女の構想が卒業までに実現できたら、素晴らしい。

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