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  • 2024.11.09

    副校長ブログ「ゆめみる」第32号 『2学期考』

成城学園中高は3学期制をとっているが、2学期は「繁忙期」。どこの学校もそうかもしれないが、成城学園中高の『2学期考』を紹介してみたい。

今年度を例にざっと2学期の学事暦を見てみよう。
始業は9月7日。他校に比べ夏休みが長いと思われがちだが、7月19日の1学期終業後は中学の海・山の学校が、高校では補講・追試の期間となる。さらに8月末から9月頭にかけては中3研修旅行や高校課外教室の期間。授業こそないが学校行事が連続し、教員はフル稼働状態だ。

始業後すぐに、飛翔祭(体育祭)の準備が本格化する。チームは6学年縦割りで編成されるため、チームパフォーマンス(応援ダンス)の練習で9月25日の飛翔祭本番まで学校じゅうが賑やかになる。コリドーには夏休み中に各色チームの担当者が制作した「垂れ幕」や、団長の実物大パネルが並び、否が応でも気分が高揚する。
飛翔祭後は1か月も経たずに中間テストになる。テスト1週間前からは部活禁止期間となり、中学生の補習週間(R週間)も始まる。飛翔祭のあとほぼ2週間で一気に「勉強しなくちゃいけない」モードがやってくる。

今年は暦が悪い。その中間テストが終わってわずか1週間で、今度は文化祭だ。当然、1週間で準備が終わるはずはなく、文化祭実行委員は夏休み前から組織されて動きを始めている。成城学園では幼初中高大と学園をあげて11月2日・3日の両日、日を固定しての「成城学園文化祭」が行われる。これが、中間テスト後わずか1週間でやってくるのだ。
さらに中学のみの行事になるが、文化祭のおよそ2週間後の11月20日には合唱コンクールがある。クラス対抗のコンクールのため、こちらも2週間ほど前から授業に加え放課後練習が始まる。各クラスともに金賞を目指してあちこちから歌声が聞こえる。

合唱コンクールが終わって1週間で、今度は期末テスト週間となり、部活が禁止されR週間が始まる。この2学期の期末テストで、中3学年は高校進学が決まり、高3の受験組は3学期には登校しない生徒も多いため、実質高校生活が終わることになる。期末テストを終えると担任面談期間となり、12月19日の終業を迎える。

「忙しすぎる」「落ち着いて勉強できない」との声は当然のように寄せられ、これまでも行事の再配置など幾度も検討・実施されてきた。だが、行事の移動にも一長一短があり、なかなかうまくいかない。行事を減らすことも考えられなくはないが、生徒たちはすべての行事に全力で取り組んでいるし、行事を楽しみにしている保護者も多く、そう簡単なことではない。生徒たちから見れば、これに秋の大会の時期にあたる部活も加わることになる。

筆者の成城学園生活30余年、ずっとこんな2学期である。

「鍛えれば全身バネになる」とは大昔のCMのキャッチフレーズだが、こんな中でも勉強してそれなりの結果を出し、色々ありつつも元気いっぱいに過ごしている生徒たちが成城学園の生徒たちだ。もちろん「しっかり勉強させないといけないから」と取り除くべきことがあるかもしれないし、点数を見た保護者からクレームに近い声をもらうこともある。
だが改めて考えてみると、ここから行事を取り除いたり、部活を取り除いたりすることが、本当に彼らのためになるのだろうか。彼らを待つ大人の社会は、ゆっくり時間が流れ、毎日追い立てられることのない平和な社会なのだろうか。
中高時代に、ある意味苦しみ、あがくことが多いということは、長い目で見れば貴重な「経験値」を積むことにならないか、と。

「錆びついて触ったら折れてしまいそうなバネ」を送り出す学校よりも、「勉強に行事にと鍛えられまくったバネ」を送り出す学校のほうが、社会に出てぴょんぴょん跳び回れる人材を生み出せるような気がしている。

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