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  • 2024.10.11

    副校長ブログ「ゆめみる」第30号 『笑顔とバトン部』

部活の話をしよう。

役職柄、難しい話に接することが多いためか、先日鏡を見ていて、最近口を「への字」につぐむことが多いことにふと気づいた。以前はよく「みなちゃんはいつもニヤニヤしている」と生徒に言われたものだが、マスクの時期が終わったと同時に就くことになった今の役職、久しぶりに日の目をみた口元だが、ニヤニヤ笑っていては務まらない。

筆者は長いこと中学バトン部の顧問だった。

まだ中高の建物が分かれていた頃、筆者が中学から高校に異動した時のこと。中学で担任した代を1年おいて高1で再び受け入れ、都合5年間、担任として関わったことがあった。その時の高3がコーチとしてバトン部の面倒を見ていたようなのだが、たまたま高校3年間担任をしたそのコーチから「皆センが中学にもどるのなら、バトン部の顧問をやってくれないか」と頼まれ、バトン部の顧問を引き受けることになった。毎年のようになぜ女子のバトン部の顧問がオジサンなのかと、生徒からも保護者からも怪訝な(?)目を向けられるが、そういう顛末である。

さて、「笑顔」の話。

「バトン部は笑顔が大事」とコーチはいつも部員に指導している。年に数回ある記念講堂での演技では、客席の一番後ろの列を見上げて口角をあげ、笑顔で踊る。おそろいのブルーのユニフォームを着て、バトンやポンポンを使う動きをそろえ、みんな笑顔で楽しく踊るのがバトン部なのだと。

中高の部活には、OBやOGがコーチとして関わり後輩の面倒を見てくれる部活が少なくない。「ワン・キャンパス」をうたっているように成城大学が同じ敷地のなかにあることもその理由かもしれないが、バトン部をみると、他大学に進学したOGがメインコーチとして部活をまとめてくれていることも多い。それにとどまらず、社会人となってからも時間をつくって練習や合宿に駆けつけてくれるOGもいる。「バトン部愛」があるのだという。

「成城ファミリー」という言葉がある。成城学園で学んだ人々の紐帯の強さを表す言葉だが、男女共学で規模も小さくまとまっていることや、同じ空間で長い時間を共有する人々が多いことから、こういう言葉が生まれるのだろう。その一つにはこうした部活の存在も大きい。

昨今の働き方改革の中で、教員と部活動との関わりも検討課題とされているが、生徒の人格形成さらには人脈形成の中で、部活の果たす役割は大きい。そう思えばこそ、時間を惜しまず部活に関わっている教員も多いのだと思う。

筆者は現在バトン部の顧問を外れているが、自分が体験し得ない部活であればこそ、部員たちの中にどうやって入り込んでいくか、そのかかわり方や、時に距離の置き方を学んだ15年だった。現在32年目の成城歴で、15年間は大きい。

そういう意味で、変化も多く感情渦巻く女子の中に身を置いた月日は、まさに私の、遅れてやってきた青春だったと感じている。この感じこそ、私の「バトン部愛」かもしれない。

そう思うのなら、笑顔を取り戻さなければなるまい。

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