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  • 2021.07.05

    【副校長ブログ19】この5年で変わったこと・変わらないこと(その2)

 こんにちは。前回、この原稿を書いているうちに梅雨入りが発表されました。東京は例年よりも1週間ほど遅いそうです。朝晩はまだ若干涼しく感じられますが、日中は気温も上がり、じめじめした蒸し暑い日が続いています。
 さて、今月上旬に予定されていた飛翔祭ですが、新型コロナウィルスの感染状況を鑑み、また生徒たちから準備のための十分な時間を確保したいという要望もあって、さまざまな角度から検討した結果、9月に延期することを決定しました。少しでも密な状況を避けるため、今回も中高別開催となります。例年通り、高3の各色の応援団長(1学年7クラス編成ですので、7色のチームに分かれます)が中学と高校の両方を統括しますが、中3の副団長は中学飛翔祭で全体の指揮を取るという大役を担うことになります。昨年度と同様にコロナ禍での実施となり、いろいろ制約がある中での学校行事になりますが、コロナでできないことを考えるのではなく、みんなで工夫を重ね、思い出に残るイベントを是非創り出してほしいと願っています。

 今から5年前、2016年は中高一貫校舎の供用が始まった年で、私は高3担任をしておりました。この年度までは中学・運動会、高校・体育祭という名称の下、別日程で同様の学校行事を実施していました。体育祭では午後の部の最初に応援合戦があり、土埃の舞うグラウンドで各色とも生徒たちが趣向を凝らした応援パフォーマンスを披露していました。わずか3分ほどの時間の中に自分たちの世界を表現するのですが、ダンスの振付だけではなく各色のテーマに合う選曲にも熱が入ります。このパフォーマンスは翌年から始まる6学年参加型の飛翔祭にも受け継がれて今日に至ります。我がグリーンチームは優勝こそできませんでしたが、当時の写真を改めて見てみると、生徒たちはすべての力を出し切った満足感であふれ、みなとてもいい表情をしています。この時の充実感とともに、5年たった現在でもこの日の出来事は彼らの記憶にしっかり刻まれていることでしょう。
 学校は学業が第一義ですが、それ以外にも自分とじっくり向き合い、そして他者と関係性を築くといった社会経験を積む場でもあります。特に自分自身を強く意識するようになり、同時に他者とのつながりが大きく広がる思春期は、社会性や協調性を養いながらしっかり自分の意見を主張し、かつ相手の考えを尊重する態度を養うことはとても大切です。現在の飛翔祭に於ける高3・中3のような年齢では、こどもたちが時にはお互いに反発しつつも、他の仲間とともに協力しながらみんなでひとつのことを作り上げていく経験はとても重要だと思います。
 今でもよく覚えているのですが、高校3年生の4月当初、私のクラスでは誰が応援団長を務めるか、クラス内で生徒の意見が割れた時期がありました。本校では高2から高3に進級する時のクラス替えはありませんので、生徒たちはお互いの性格などについてはすでによくわかっていますし、他のクラスで誰が団長になるのか、という情報も入ってきています。クラス担任の立場としては、団長に誰も手を上げないのは困りますが、立候補が複数出た時に彼らがどのようにそれを解決していくのか、興味深く見ていました。時には生徒のグチを聞かされることもありましたが、個性が全く異なるピースをどのように当てはめ、ひとつのチームを作り上げていくべきか、彼らは時間をかけて話し合い、最後には皆が納得できる結論 — 候補の一人が相手に団長職を譲り、団長に選ばれた方がもう一人を副団長に指名し、共に力を合わせてチーム作りに専念する - に至りました。
 飛翔祭のような行事は運動が得意な生徒が多いだけでは成立しません。応援パネル制作や小道具作りには芸術的なセンスと手先の器用さが必要です。ダンスパフォーマンスの振付と選曲にも相応の知識と経験、センスが当然求められます。また、団長がリーダーシップを発揮するためには、周囲のサポートが不可欠です。前述の応援団長選出のプロセスは妥協の産物にしか見えないかもしれませんが、彼らにとって重要だったのは、クラスの42人を一人もこぼさずに生かし、ひとつにまとめ上げるという目標で一致し、納得のいく議論ができたことだったと思います。自分ならどんな立場でどんな貢献ができるだろうか、ということをひとりひとりが考え、自ら進んで行動する。その後、各パートに分かれての準備作業を含め、とても充実した活動になったことは前述の通りです。
 応援団長の7名は各色の代表であると同時に7名一丸となって学校行事を盛り上げていく重要な役割を持っています。各クラス内での役割分担と同じように、団長7名の集団がお互いの個性や長所を生かしながらひとつのストーリーを構成し、参加者全員に対して貢献する。彼らは半年以上かけて7つのパズルを完成させ、そしてさらに大きなパフォーマンスを完成させることができました。彼らをよく知る先生方が適切なアドバイスを与えつつ、彼らの力を十二分に引き出してくれたことは本当に幸運でした。
 当時高校3年生だった生徒たちは、その多くがこの4月から社会人一年目を迎えています。学生から社会人という新しいステージに入り、またこのような社会情勢の中、何かと戸惑うことも多いと思いますが、これまで培った経験を基に、臆することなく彼らが活躍することを心から応援しています。
 このようにいろいろな経験を積みながら、こどもたちが日々成長する姿を見ることができるのが、今も変わらぬ成城学園の日常のひとこまです。

中高体育館の裏手で見つけました。こんなところにも生えていることに驚きました。

ホタルブクロです。花の色は紫だとばかり思っていましたが、白い花もあることを知りました。花言葉は「忠実」だとか。
 まだまだ梅雨空は続きそうです。

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