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  • 2020.04.08

    中村校長より高等学校新1年生のみなさんへ

入学式の式典は延期になってしまいましたが、中村校長から新入生の皆さんへメッセージがあります。

高等学校 新1年生のみなさんへ  
入学おめでとうございます。
 今日(7日)は天気もいいし、小さな春の花がたくさん咲いていて、こんな状態じゃなければ光にあふれたスタートとなる一日でした。三月末の新入生ガイダンスの時には、ここまで休校期間が伸びるとは思っていませんでしたので、何度も何度も皆さんを迎える方法を考えてきただけにとても残念です。校舎の正面エントランスの脇には、記念撮影用の段が折りたたまれたまま置いてあります。3階のHR教室、新しい名簿、時間割、身分証明書、いろいろなものが、出番が来るのを待っています。そして、あらためて、みなさんに伝えたいのは、「皆さんは成城学園高校の1年生になりました」ということです。言われなくても当たり前のことなのですが、この当たり前にはいろいろな意味があります。
 たとえば、今日、先生たちは、あらためてGoogleClassroomの研修会というのを行いました。コンピューターが苦手な先生たちも含めて、皆さんへ色々な発信をしていく準備を進めています。そう、まだ会ったことがない先生も含めて、これから発信していく先には皆さんがいます。慣れていない先生もいるので、少しぎこちないものかもしれませんが、いつもと違った形でのHRの「つながり」が始まります。そして、皆さんからの返信を受けることも可能になっていきます。そんな準備をすればするほど、こんなぎこちない「つながり」ではなくて、まるで空気のような普段の何気ないつながりが一日も早く戻ってくることを心から望んでいます。
 ある哲学者が、「普段、人は、互いの時間を奪い合い、互いの平穏を破り合い、互いを不幸にしている。」というような言葉を残しています。たしかに、最近のSNSの状況を見ると、この言葉の中には正しさがあるように思います。でも、学校という場は、見えない空気のようなたくさんの「つながり」をつくり、そのつながりの中で、互いの時間を無駄に奪わず、互いの平穏を守り、互いを幸福にするための方法を考えること、そのための知恵を学ぶ場なんじゃないかと思います。理想論かもしれませんが、こんな時だからこそ、皆さんの新しい「つながり」を本当に豊かなものにしていきたいと思うのです。
 もしかしたら、高校入学を機会に新しいスマホを手に入れた人がいるんじゃないかなと思います。また、高等学校ではみなさんが授業で使うiPadを発送できるように準備しています。スマホやタブレットといった道具は、遠くの人とのつながりを可能にしました。でも、本当に大事なつながりは、とても身近なものだと思います。たとえば、先日電車に乗っているときに、私の横に小さな女の子が座り、その前にその子のお母さんが立ちました。女の子は絵本を読んでいて、お母さんはスマホの画面を操作していました。小さな声を出して絵本を読んでいた女の子が、ふと、お母さんに「あのね」と言いました。お母さんは、スマホの画面から目をはなさずに、「なに?」と答えました。また、女の子は「あのね、あのね」と繰り返しました。そう、女の子は、絵本の中に何かを発見して、それをお母さんに伝えたかったんです。「あのね」ってとても近い距離のつながりをつくるときの言葉だと感じました。スマホは、時々、近くの人とのつながりを見えなくする道具だと思います。最近の自粛や制限がなくなったときに、「あのね」と言えるような近い関係をたくさんつくり、それを大切にできる場を作る方法を、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。くりかえしになりますが、入学おめでとうございます。

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