初等学校だより

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  • 2022.01.29

    英語の授業における「主体的・対話的な深い学び」の実験的取り組み — 低学年の英語劇 —

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 12月15日(水)、初等学校講堂では1週間後に本番を控え、2年椎組の英語劇の練習が大詰めを迎えていました。今回挑戦する英語劇は『桃太郎』。この日は、おじいさん、おばあさんの元を離れて、桃太郎が鬼退治に出発するシーンと、桃太郎とその仲間が鬼と戦うシーンを練習。「このセリフを言う時はどんな気持ちなの?」「ケンカする時そんなに静かじゃないよね」。よりリアルな演技を求めて先生が演技指導。短時間で子どもたちのセリフは客席にまで届くようになります。
 成城学園初等学校の英語教育では、テキストブックから得た知識や技能を、実際のコミュニケーションの中に落とし込み、使用する機会を設けることで生きて働く知識・技能にするための実践的な学習を取り入れています。低学年の授業では、英語の絵本を元に、自作の絵本を作成してクラスの仲間や下級生に読み聞かせる「Story-telling Project」を行ってきましたが、今回初めて2年生が英語劇に挑戦しました。
 劇では、セリフをそのまま話すのではなく、演じる場面や状況で表現を変える必要があります。また「観客」に伝える表現力も必要になり、まさに英語を使ってコミュニケーションをとるための学習です。1クラスを6人の6グループに分けて1グループずつ順番に演じます。待っている間は観客役となり舞台に耳を傾けます。ワンシーンを演じるごとに、「今のどうだった?」「今度はどうだった?」と先生が観客役の子どもたちに問いかけると、「良く聞こえない!」「今の良かった!」と即座に反応が返ってきて、そのアドバイスが演技に反映され、演技がみるみる上達していきました。

  • 本番を想定した講堂での練習。「声の大きさ、顔の向きと体の向き、セリフだけじゃなくて身振り手振りでも表現するんだよ」先生からのアドバイスで練習スタート
    本番を想定した講堂での練習。「声の大きさ、顔の向きと体の向き、セリフだけじゃなくて身振り手振りでも表現するんだよ」先生からのアドバイスで練習スタート(左:ロブ先生 右:梶山先生)

  • 桃太郎一行と鬼の戦闘シーン。セリフはしっかり頭に入っている子どもたち。台本を持っている子はいません
    桃太郎一行と鬼の戦闘シーン。セリフはしっかり頭に入っている子どもたち。台本を持っている子はいません

  • 見学中のグループはロブ先生と一緒に観客役となり演技をジャッジ。声が届いている時はマル、聞こえない時はバツでステージの子どもたちに伝えます
    見学中のグループはロブ先生と一緒に観客役となり演技をジャッジ。声が届いている時はマル、聞こえない時はバツでステージの子どもたちに伝えます

  • 「どんな気持ちでこのセリフを言ってるの?」先生とのやりとりで、セリフに気持ちが込められ、発声も変わります
    「どんな気持ちでこのセリフを言ってるの?」先生とのやりとりで、セリフに気持ちが込められ、発声も変わります

  • 「全然聞こえなーい!」「良くなってきたよ!」。クラスの仲間たちの正直な反応に後押しされて発声や演技がどんどん良くなっていきます
    「全然聞こえなーい!」「良くなってきたよ!」。クラスの仲間たちの正直な反応に後押しされて発声や演技がどんどん良くなっていきます

  • せっかく覚えたセリフも、届かなければ意味がありません。いかにお客さんに伝えるか、どうしたら伝わるか、練習で確認しました
    せっかく覚えたセリフも、届かなければ意味がありません。いかにお客さんに伝えるか、どうしたら伝わるか、練習で確認しました

 劇上演の本番は12月23日(木)、初等学校文化祭で披露しました。当日は先生や保護者の方、大勢の見守る中での上演です。初等学校では劇の会という長い歴史のある行事を年3回開催し、3年生から6年生がクラスごとに創作劇を上演する恒例の行事があります。1、2年生もこれまでお兄さん、お姉さんの演じる劇を観る機会があり、劇が身近なものと感じていますが、演じる側として舞台に立つ緊張感は半端ではなかったと思います。それでもセリフが飛んでしまったり、途中で劇が止まってしまったりすることなく、全グループが最後まで演じ切ることができました。観客を前に「英語で演じる」という高いハードルをクリアした子どもたち。楽しく演じる中でも反省点や課題を各自が感じたことと思います。それぞれの課題を次のチャレンジに活かして欲しいです。
 初等学校の英語教育は「2年生の英語劇」を初めて行うことで大きな一歩を踏み出しました。劇を観た他の学年の子どもたちも大いに刺激を受けたことでしょう。

  • 練習時とは一変!当日はたくさんの観客の前での上演となりました
    練習時とは一変!当日はたくさんの観客の前での上演となりました

  • 本番も演技に集中してクラス全員が覚えたセリフをきちんと発することができました
    本番も演技に集中してクラス全員が覚えたセリフをきちんと発することができました

  • 「attack!!」。ステージ上の仲間と気持ちを一つに戦う場面では、おのずと演技にも力が入ります
    「attack!!」。ステージ上の仲間と気持ちを一つに戦う場面では、おのずと演技にも力が入ります

  • 繰り返し練習した戦闘シーン。台本にセリフが無くても、アドリブで自然と声が出て迫力もありました
    繰り返し練習した戦闘シーン。台本にセリフが無くても、アドリブで自然と声が出て迫力もありました

  • 体の向き、発声の大きさなど、練習の成果を存分に発揮した子どもたち。立派に演じ切ることができました
    体の向き、発声の大きさなど、練習の成果を存分に発揮した子どもたち。立派に演じ切ることができました

  • 演じた後はどのグループからも笑顔が溢れ、お互いを称える拍手を贈りました
    演じた後はどのグループからも笑顔が溢れ、お互いを称える拍手を贈りました

(文責:企画広報部)

授業のポイント!

 桃太郎と聞いて、皆さんは何をイメージされますか?本を読まなくても物語の内容や、そこに出てくる登場人物の会話がイメージできるはずです。その会話を英語で表現することで、英語をより身近なものとできるのです。
 しかし、多くの子ども達が英語を読めるということを期待しているわけではありません。では、子ども達はどのようにセリフを覚えていくのでしょうか。子ども達は一つのセリフを覚えるために外国人講師と協力して作った英語の動画を何度も何度も見て、まねるのです。そうすることで、まるでお気に入りの音楽を覚えるように、自然と英語のセリフを口ずさめるようになっていくと考えています。これが、音声から学ぶということです。聞こえてきた音声をそっくりにまねすることで、発音やイントネーション、英語のリズムを身に付けていくことをねらっています。
 一つの劇を36人で行うことをイメージしてください。仮に、36個のセリフがあったとすると、一人が英語を話す機会は一回になってしまいます。これを6人で演じるとなんとセリフは6倍になるのです。英語を話す機会が増えれば増えるほど英語を話せるようになると私たちは考えます。また、劇をする時は自分のセリフを言うために前後のセリフも自然と覚えていくのです。したがって、頭の中に自然と入ってしまう英語のフレーズは6倍ではなく、12倍にも及ぶものになると考えています。実際に、多くの子どもたちが自分の役以外のセリフも台本がなくても言えるようになっていました。
 英語の詩を暗唱するのではなく、英語の物語文を暗記するのでもなく、劇にした理由は、そこにノンバーバルランゲージと言われる身振り手振りが自然と加わるからです。想像してみてください。動きのない劇は想像できないはずです。役になり切り、自分のセリフをいうために子ども達は自然と自分の言葉としてセリフを話すようになります。そこには必ず、感情表現がなければ会話として成り立ちません。
 自分たちが演じた劇で大きな拍手をもらった子供たちはどのように感じるでしょうか。成功体験から次への意欲が生まれると私たちは考えています。さて、次に英語劇として子ども達は何をやりたがると思いますか。私たちもワクワクしています。
(授業者:梶山、ロブ 協力:マイク、今井)

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