数学研究部

研究方針

〜学んでほしいことは、できるだけ教えない。〜
 それが、成城学園初等学校数学部のポリシーです。「数学」というと、問題の解き方を教わって演習をするというイメージをもたれている方も多いのではないかと思いますが、そのような"教えられる学び"で得られるのは、教室の外で生かされない知識だということが言われるようになってきました。
 では、これからを生きる子どもたちにとって、どのような学びが必要なのでしょうか?その壮大な問いに対する答えとして、私たちが考えているのが、"創る学び"です。問題そのものを見いだし、試行錯誤しながら解決方法を粘り強く考え、仲間と話し合って、これまでの学びを論理的に組み上げながら、数学の世界を自ら創っていくのです。
なぜ"創る学び"を大切にしたいかというと、そのような学習を通して、子どもたちに次のような力を育ててほしいと思っているからです。
「問題を見つける力」
公式や解法のパターンをたくさん覚えても、大人になって同じ問題に困ることはありません。未来を創るためには、「なぜだろう?」「どうしたらいいかな?」「もっとよくできないかな?」と、問題そのものを見つける力が必要です。
「問題に向き合う力」
社会に出て対峙するのは、簡単に答えが見えないような問題ばかりです。知らないからできない、できないかもしれないからやらないでは、前に進むことができません。未知の問題にも、試行錯誤しながら粘り強く向き合っていく力が求められます。
「他者と関わる力」
問題を見つけ、それと向き合うことができても、一人でできることには限界があります。互いのよさを生かしながら、よりよい解決方法を生み出していくような他者との関わりができれば、きっと豊かで明るい未来を切り拓いていけることでしょう。
「それって数学の授業で育てることなの?」
そう思われた方もいるかもしれません。もちろん、数学的な思考力・表現力・判断力を養ったり、数学を使っていくための知識・技能を習得したりすることを軽んじているわけではありません。これらの"数学の力"を豊かに育てていくために、「問題を見つける」「問題に向き合う」「他者と関わる」といった力が必要であり、同時に数学の授業でこそ、それらの力が育まれていくと考えているのです。言わば、車の両輪のような関係です。

2025年度研究テーマ:内面の豊かさを育てる数学科の授業の創造

 本校数学部では、子ども自身の内側に育てたい力を、「好奇心・探究心」として大切にしています。知らないことをもっと知りたいと思う心や、身の回りの出来事に「なぜだろう」と立ち止まる心です。数学の学習では、すぐに正解にたどり着くことよりも、「あれ?」「少し分からないな」と感じた自分の気持ちに目を向けることを、学びの出発点にしたいと考えています。
 例えば、小数のかけ算の学習で「80円が2.3個分」という表現に出合ったとき、「この言い方は本当に合っているのだろうか」と違和感を覚える子どもがいます。また、場合の数の学習では、「これで全部と言えるのかな」「まだ考え落としていることはないかな」と不安になる場面もあります。こうした疑問や戸惑いは、決してつまずきではありません。数量の関係を丁寧に捉えようとする、好奇心・探究心が働いている姿なのだと思います。分からなさをそのままにせず、考え続けようとすること。自分なりに納得できるところまで向き合おうとすること。その積み重ねが、数学の学びを支えているのかもしれません。本校では、子どもが安心して「分からない」と言える雰囲気を大切にしながら、学びを深めていきたいと考えています。
 また、本校では、他者に向けられる内面の豊かさも大切にしています。それを「協働する心」や「受容・共感・敬意」として捉えています。数学の授業では、同じ問題に取り組んでいても、考え方や感じ方は一人ひとり異なります。分数の学習で、「形が違うのに同じ分数と言ってよいのか」という一人の疑問をきっかけに、友達の考えを聞き合いながら理解を深めていく場面があります。友達の話に耳を傾け、「なるほど」と感じる経験を通して、子どもたちは多様な見方や考え方を受け入れていきます。
 数学では、知識や技能、数学的なものの見方や考え方を育むことはもちろん大切です。それと同時に、周りの友達や目の前の事象に真摯に向き合おうとする心も、一緒に育んでいきたいと考えています。考えることと、感じ取ること。その両方が重なり合うところに、数学の学びの価値があるのではないでしょうか。このような子どもたちの姿を出発点として、本校数学部では、授業の中でどのように学びを紡いでいけるのかを研究テーマとして定め、日々検討を重ねています。