劇科研究部

劇科が大切にしていること

劇科では、子どもたちが「演じること」や「表すこと」を通して、自分の思いや考えを見つめ直したり、友だちの気持ちにふれたりする時間を大切にしています。
ここで目指しているのは、うまく表現することや、決められた役を演じきることではありません。身体や声、ことばを使って「やってみる」ことそのものを楽しみながら、互いの表現に出会い、感じ合うことに価値を見出しています。
教室の中で行われる日々の劇活動には、子どもたちのさまざまな思いが立ち現れます。話し合いながら物語を考える時間、場面をつくる時間、動きや言い方を試してみる時間。その一つひとつの過程の中で、子どもたちはだれかと気持ちを合わせることの難しさや、自分の思いを伝えることのもどかしさに出会います。
しかし、そうした経験こそが、自分自身を見つめたり、人との関わりを考えたりする大切な学びにつながっていきます。だからこそ劇科では、「どんな気持ちでそこに立っているのか」「どんな場面をみんなでつくりたいと思っているのか」という内側の動きを、ていねいに見取り、支えていくことを重視しています。
こうした日々の積み重ねの延長線上には、「劇の会」という舞台発表の場があります。そこは、完成された表現を披露するためだけの場ではなく、子どもたちが仲間とつくり上げてきた時間や関係、その過程そのものが立ち現れる場でもあります。教室で生まれた一人ひとりの試みや、やりとりの中で育ってきた表現が、舞台という場であらためて響き合う——劇科では、そのようなつながりの中で舞台発表を位置づけています。

つくる学びとしての劇活動

劇科の活動は、決まった台本を覚えて再現するものではありません。子ども自身の言葉や動きから生まれてくる、「つくる」学びとしての側面を大切にしています。

言い回しを考える時間、動きを試す時間、友だちとやりとりを重ねる時間。思ったようにいかないときには立ち止まり、どうすればよいかを話し合います。こうした試みの積み重ねの中で、表現は少しずつ形を変え、広がっていきます。

その過程で子どもたちは、自分の感じ方に気づいたり、友だちの表し方の面白さに心を動かされたりします。劇活動とは、完成された表現を目指す時間である以上に、表現が生まれ、関係の中で変わっていく時間でもあります。

三つの視点から捉える劇科の学び

本校の劇科では、日常の劇活動をより意味あるものにしていくために、子どもたちの姿を次の視点から見つめています。

1.「やってみたい」気持ちが生まれる場
子どもが「こう動いてみたい」「こんなふうに言ってみたい」と思える瞬間を大切にしています。安心して試すことのできる雰囲気や、互いの試みを受け止め合える関係の中で、表現は自然にひらかれていきます。
教師は、その芽生えを見逃さず、場の流れや声かけを工夫しながら、子どもの試みが広がる環境を整えていきます。

2.ことばと動きのつながりを見る
子どもがどのような動きをしたときに思いが伝わったのか。友だちの声や動きにどう応答していたのか。活動の中で生まれる自然な表現に目を向けます。
決まったせりふや型に当てはめるのではなく、身体や声から立ち上がる表れ方を受け止め、その意味をともに考えていくことを大切にしています。

3.過程そのものを学びの中心に
劇科では、本番に向けて形を整えること以上に、「みんなでどうつくっていくか」という過程を重視しています。
話し合い、試し、やり直し、また試す。その繰り返しの中で見えてくる思いや関係性こそが、学びの核になると考えています。

2025年度研究テーマ:内面の豊かさを育てる劇科の授業の創造

2025年度、劇科は共通研究主題を受け、「内面の豊かさを育てる劇科の授業の創造」をテーマに研究を進めています。

劇活動の中で子どもたちは、
・自分の思いに気づく
・表してみて確かめる
・友だちの表現に心を動かす
・感じ方の違いに出会う
といった経験を重ねていきます。

それは、自分の内面に向かう豊かさであると同時に、他者へと開かれていく豊かさでもあります。

日常の中で育つ学び

こうした学びは、「劇の会」のような発表の場だけで育まれるものではありません。むしろ、日々の授業の中で積み重ねられる表現のやりとりの中にこそ、その土台があります。
作品の完成度ではなく、子どもたちが自分のことばや身体で表し、仲間とつながる経験をどれだけ重ねていけるか。その歩みを支え続けることが、劇科の役割だと私たちは考えています。