文学科研究部

文学科が大切にしていること

文学にふれることは、子どもが世界や人間、そして自分自身と出会うことそのものだと、私たちは考えています。

物語の中の出来事に心を揺らしたり、登場人物の思いに重ね合わせたりしながら、子どもは自分の中にある感情や価値観に気づいていきます。
言葉としてうまく言い表せない思いであっても、作品を読み、想像し、語ろうとする過程の中で、少しずつ輪郭を持ちはじめます。

文学科は、文学を「ことばの芸術」として捉え、音楽や美術と同様に情操の領域を担う教科として位置づいています。作品を味わい、感じ、表す営みを通して、子どもがものの見方や感じ方を深めていく時間を大切にしています。

子どもたちの姿を見ていると、作品を読み終えた後よりも、読み進めている最中にこそ、心の動きが立ち現れる場面があります。

「この人、さびしいのかな」
「どうしてこんなこと言ったんだろう」

と立ち止まりながら、物語の世界に入り込んでいく姿です。

それは、言葉を理解するというよりも、作品世界を生きようとしている姿のようにも見えます。

こうした実践や研究を重ねる中で、私たちは

「子どもは作品と出会うことで、自分の内面と出会っている」

という子ども像にたどり着きました。

読みの途中にある迷いや揺れ、言葉になりきらない感覚の中にも、子どもなりの感じ方や考え方が確かに存在しています。

このような考えのもと、私たちは次のことを大切にしています。

・解釈を一つに定めないこと
 作品の読みは一通りではなく、子どもの数だけ存在します。
 教師の読みを示すことよりも、子ども自身の感じ方を出発点に据えます。


・共有が生まれる場をつくること ~作品を通して、人を知り、自分を知る~

 感じたことを語り合う中で、子どもは他者の見方に出会い、自分の感じ方を確かめ直していきます。

・読みの時間は、想像の連続であること

 情景を思い浮かべ、人物の心情を想像し、言葉の奥にある思いに近づこうとする過程そのものを大切にします。

・文学体験が生まれる場を大切にすること

 読み聞かせや語り、静かに読む時間など、作品にひたることのできる環境づくりを重視しています。

鑑賞と表現の二つの柱

本校の文学科は、

「鑑賞教育」と「表現教育」 の二つの柱で構成されています。

鑑賞
低学年では、読み聞かせや語りを通して物語を「聴く」ところから始まります。

物語を楽しみ、登場人物になりきり、素朴な感情を表す姿を大切にしています。

中学年になると、作品世界にひたりながら読み、人物の心情や行為について自分なりの考えを持つようになります。

さらに高学年では、表現の面白さや巧みさ、作品の主題にも目を向けながら、感じたことを言葉にし、話し合う学びへと広がっていきます。

ここで重視しているのは、細部の分析に偏ることではなく、作品の世界に読みひたる体験そのものです。

表現

表現の時間には、子どもが心を動かされた出来事や体験をもとに文章を書きます。

見たこと、聞いたこと、感じたことを、自分の言葉で表していく。

「とにかく書いてみる」ことを大切にしながら、書くことへの抵抗感を和らげ、表現する喜びを育てていきます。

書く内容は、自分の体験にとどまらず、自然へのまなざしや身近な人への思い、社会への関心へと広がっていきます。

2025年度研究テーマ:内面の豊かさを育てる文学科の授業の創造

本校の共通研究主題を踏まえ、文学科では「内面の豊かさ」を、鑑賞と表現の往還の中で育つものとして捉えています。


① 自己に向かう内面の豊かさ

作品に登場する人物の思いや情景に触れるとき、子どもは自分の経験や感情と重ね合わせながら読み進めています。

「自分だったらどうするだろう」
「なぜこんな気持ちになったのだろう」

そうした思索の時間は、子どもが自分自身の感じ方や価値観に気づいていく時間でもあります。

さらに、感じたことを文章に表すことで、その感動はより確かなものとなり、内面が言葉として形づくられていきます。


② 他者に向かう内面の豊かさ

感じたことを語り合うとき、子どもたちは自分とは異なる読みや受け止め方に出会います。

同じ作品であっても、心に残る場面や人物への思いはそれぞれ異なります。

その違いを持ち寄り、語り合う中で、作品理解は深まり、他者の感じ方を受け止めようとする姿勢が育っていきます。

文学を介した対話は、子ども同士の関係を結び直し、互いの内面に触れる時間ともなります。


教師の役割

文学科の授業において教師は、読みを方向づける存在ではなく、子どもと作品とのあいだに立ち、学びの場を支える存在でありたいと考えています。

どの言葉に心が動いたのか。
どの場面で立ち止まったのか。

その姿に耳を澄ませながら問いを手渡し、多様な感じ方が安心して語られる環境を整えていきます。

子ども一人ひとりが作品と出会い、自分の内面と出会い、他者と出会っていく。

その過程を静かに支えていくことが、文学科教師の大切な役割であると考えています。