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  • 2021.01.12

    学びを止めなかった成城学園 コロナ禍の取り組みについて取材を受けました

2020年2月から始まったコロナ禍で行われた成城学園初等学校での取り組みについて、渡辺共成校長が『スクールダイヤモンド』編集部の取材を受けました。

— 2月27日に出された小中学校の全国一斉臨時休校の要請は、突然のことでした。
 確かに週末で慌ただしかったのですが、成城学園では、それより2週間早い2月14日に、園長・校長・学長ら幼稚園から大学までの長が招集されて、理事長、学園長から新型コロナウイルス感染症の流行は当分の間、収束が望めないという判断とともに『新型コロナ対策本部』立ち上げの方針が示されていました。

— 先んじて学園全体の力が集結されていたのですね。休校直後は何から始められましたか。
 保護者と教職員が全体にも個別にもつながる連絡網「初等ネット」で情報を共有しました。
 子どもたちはこれまでも授業でタブレットを使う機会はありましたし、映像の授業ではカメラ、ビデオ、パソコンを駆使して作品づくりもしていましたが、オンライン授業の経験はありません。それでも、卒業間近の6年生には、休校直後から外部のオンラインシステムを利用してホームルームや、社会や理科、英語の授業を行い、卒業式はクラスごとに時間差登校ながら挙行しました。

— 4月になっても登校できない日が続きました。
 4月1日、新入生と在校生それぞれに、私から初等ネットを通して新学期スタートの挨拶を送りました。
 そこから、教職員は総力をあげて全校のオンライン授業開始に向けて動き出し、3週間後にはポータルサイト「もぐとかげの森」を立ち上げ、実験授業を行うまでに漕ぎつけました。
「もぐとかげ」は、初等学校100周年を記念してつくられたオリジナルのキャラクターの名前です。ご家庭にオンライン授業の送受信の進め方を説明しながら、毎週アンケートをとって質問や相談に応えながら進めました。
 オンライン授業と動画コンテンツの配信の2つを柱としたしくみが整い、5月の連休明けから、本格的にオンライン授業が始まりました。
 ホームルーム、国語、数学、社会、理科、英語は家庭にいる子どもと先生が画面上で、通常と同様に対面して授業を行い、美術、音楽、体育は先生が制作物や練習方法を提示して課題を出しました。
 動画コンテンツには学園の様子を伝えるもの、専科教員の楽しい話題もアップしました。
 6月になっても分散登校でしたから、授業はリアルとオンラインで進めました。
 オンライン授業や動画コンテンツはアーカイブされて、現在も随時活用されています。

— タブレットとインターネットの活用で、学びが広がった面もあったのではありませんか。
 学びを止めない。ひとりも取りこぼさない。この2点はオンライン授業を行う目的でしたが、同時に、子どもの心の安定を守ることが課題でした。それだけに、6月に登校してきた子どもたちの笑顔を見ることができたよろこびはひとしおでした。

— 分散登校期間はどのような形をとったのですか。
 登校日は登校日は奇数学年と偶数学年で分け、さらに1クラスを2グループ(1年生は4グループ)に分けて午前と午後に登校しました。同じ授業を2回行う教員の負担は大きかったのですが、滞りなくやり切ることができました。
 7月に入ってようやく1日6コマの授業を行えるようになったものの、授業時間を5分間短縮して、手洗いや教室の喚気、衛生指導などの予防対策に充てています。

— 初等学校の特色のひとつである、たくさんの行事が実施できませんでした。
 行事・宿泊行事等すべてが学期中は実施できず、夏休みも短かったのは残念でしたが、2学期の最初に、更衣室6カ所を確保してプールで水泳の授業を行うことができたことは、子どもたちもたいへんよろこびました。
「観察の森」など学園内を歩く低学年の散歩の授業も実施できました。自然豊かな広い敷地をもつ学園環境の恵みをつくづく感じました。

— オンライン授業などの経験は、これからの学びにどう生かされていくのでしょう。
 2020年は変則的な教育活動を余儀なくされました。反面、初等学校のICT教育は大きく前進したので、プラスもあったと考えています。
 これからは、子どもたちは好きなときに『もぐとかげの森』にアクセスして、たとえば英語のみを使って進められる授業を繰り返し聞くといった活用をするようになるでしょう。
 第2世紀の成城教育「教育改革の3つの柱」のひとつである「理数系教育」の取り組みに求める「数学的教養を通して論理的な思考力を強化する」ことにも、ICT機器の活用は欠かせないものになると思います。

スクールダイヤモンドの初等学校紹介記事はこちら

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