幼稚園生活
10月28日(月)、年長組は彫刻家の高橋智力先生による造形活動を行いました。今回のテーマは「空に線を描こう」です。「空に絵を描ける魔法のクレヨンがあったら、どんな感じかな?想像してみよう」と呼びかける智力先生。画用紙と違い、空という3次元の空間をキャンバスにして絵(線)を描くために使うのは、上面にたくさんの穴が開いた木のブロックと針金。ブロックの穴に針金をさすことで空中に自由な線を描き出します。
まずは土台となる木のブロックを絵具で色付け。いつもの画用紙と違って厚みがあるので、側面まで色を塗っていきます。そして針金の先端をブロックの穴に差し込み、曲げたりねじったりしながら思い思いの形を作り出します。
今回のルールは2つ。1つ目は針金の両端を穴にさすこと。片方が突き出たままだと危ないので、必ず両方とも穴にさします。針金を使うときも隣のお友だちを傷つけることがないように十分注意して、と智力先生からの注意を子どもたちも真剣に聞いていました。ルールの2つ目は針金同士がぶつからないようにすること。複数の針金をお互いがぶつからないように組み上げていくのはゲームのような楽しさと難しさがありました。
完成したのはジェットコースターのようにぐるぐるねじれた作品や、花びらのように広がる作品など、子どもたちの無限に膨らむ想像力が発揮された作品たちが並びました。
智力先生から「見る方向によって違う形に見えるね。これが紙に描いた絵と、空に描いた絵の違いです。」と説明があり、「こっちからは山にみえる!」「こっちから見るとハートにみえる!」と子どもたちも見え方の違いを理解しながら鑑賞していました。
木はそれぞれ模様が違うから、よく見て選びます
2人で1つのパレットを仲良く使おう
独創的ですてきな土台ができそう
側面から始めるのも、あり
土台が塗れたら、いよいよ針金で空に線を描く
次はどんな形に曲げようかな
逆から見ても針金がぶつかっていないかな?
針金がぶつかっていそうでいないね
見る方向によって形がかわることを説明する智力先生
友だちの作品も気になります
ともりき先生よりひとこと
普段クレヨンや筆を走らせている画用紙の上ではなく、厚みのある木材、そして針金をつかった空中での描写にチャレンジしてもらいました。
最初に頭に思い描くものはきっと平面作品ですが、実際に針金をくねらせながら生まれてくる描写は自然と立体作品となり、いつの間にか制作の思考そのものが立体的なものへと誘われる制作です。
素材に慣れてくると、徐々に気になりだす二つ目のお願い「針金同士は絶対に触れない様にすること。」です。素材の特性がわかればわかるほどに、難しい線の通し方に挑戦してみたくなる様で、針金同士をギリギリのところで触れない所に針金を楽しそうに通します。
「ぶつかっている様で、実はぶつかっていない形」これを実現する為に、自然と子ども達は作品を回転させたり、自分が作品の裏側へと回り込んでみたり、時には上から下からと交互に覗き込んでみたりを忙しく繰り返し始めます。
実は、子ども達のこの行動により、立体作品を創作する過程で最も大切なものを自然と手に入れる事が出来るのです。
沢山の視点から作品をとらえ、数々の魅力を発見し、作り手自身が一度でもその美しさに感動出来れば、今度は自ら作品としての見所を次々に仕込む為に、自然と手が動き出すはずです。そして、この部分こそが彫刻制作過程において、面白さや爽快さを最も感じる部分です。
同じ一つの作品でも、その作品を楽しむ為には、ひとつの視点だけで捉え、満足するのではなく、様々な方向から見つめてみること。
世の中のいろいろな面白いことを見つける方法のひとつを、アートを通じて楽しく体験して貰えていれば嬉しいです。
(造形活動講師・高橋智力)