幼稚園生活

最近の出来事

 2月28日(月)、年中組の造形活動を行いました。講師はこれまでもご担当いただいている彫刻家の高橋智力先生です。
 今回は紙、ハサミ、色えんぴつを使ったシルエットあそびをしました。最初に紙を好きな形にハサミで切り抜きます。切り抜いた紙を大きな画用紙に乗せて、その紙の縁を好きな色の色えんぴつで塗っていきます。切り抜いた紙を移動させて、同じように縁を塗ることを繰り返すと、全く同じ形を簡単に次々と描くことができることを教えてもらいました。「好きな形に切り抜いてみよう。1つだけでも、違う形をいくつか切り抜いてみてもいいよ」。先生の説明を聞いてすぐに作業に取りかかりました。「切り抜いた紙は動かないようにしっかり押さえて」。先生の説明をきちんと理解して色えんぴつを手にもくもくと作品作りを進める子どもたち。同じように説明を受けても、完成した作品は千差万別。形も色も一人一人違う色鮮やかな作品が仕上がりました。
 子どもたちは年間を通して数回、高橋先生による造形活動を行っています。年中組の子ともたちは、画材道具の扱い方を習得しただけでなく、先生の説明を聞く姿勢や作品作りに取り組む集中力も着実に身につけています。

いつも智力先生と楽しい作品制作を体験している子どもたち。「今日は何をするの?」と期待のまなざしで先生の説明を集中して聞いていました

最初は画用紙を好きな形に切り抜きます。真剣に作品作りに集中する子どもたち

切り抜いた紙を別の画用紙に乗せて縁を塗っていきます。「紙をしっかり押さえて」という先生のアドバイスをしっかり聞いて実行しています

どこに紙を置いたら次はどんな形になるか、悩みながら進める姿も見られました

各自、作品作りに打ち込む姿が印象的でした。今回も個性豊かな作品が完成しました

年中組造形活動のねらい

年中組として、その一年のクライマックスを迎えようとしているこの時期。子どもたちは、様々な事に対しての「成功パターン」というものを見つけ出し、自信をもって、実行そして再現出来るようになる成長著しい時期です。
一方、パターンを手に入れる事で簡単に自分の表現が可能になる代わりに、「もうこれは知っている」という気持ちが、どことなく描く絵に込めるメッセージや感動成分を薄めてしまうケースが散見する時期でもあります。
そこで、子どもたちに自分たちの手がける作品には、見てくれる人へ向けてメッセージを伝える力があるのだということを、みんなで一緒に再確認出来る時間を模索しました。

 この春、原宿から札幌へ舞台を移す予定であるバンクシー展の主役ストリートアーティスト、バンクシーが手がける作品群は、まさに力強いメッセージの塊です。彼が胸の中で想う事を、誰かに伝える手段として選んだアート表現は、言語や国境の壁を揚々と飛び越え、力強く世界中の人々に向けて発信され続けています。
子どもたちにとってパターン化されつつある、お絵描きのプロセスをほんの少しだけ崩してあげるために、バンクシーが好んで表現に用いている、型紙を使用したステンシルアートの世界からその一部を抽出アレンジして、子どもたちにもその世界観を体験してもらうことにしました。いつもの画用紙への直接描写ではなく、型紙を自分たちでまず切り出してからの表現手法や概念は、将来子どもたちがPC上でのイラストレーションを試みた時にも、さりげないヒントとなるはずです。その型紙を小さな手で押さえながら、半信半疑で色えんぴつを動かします。その軌跡は最初どこか遠慮がちでしたが、ゆっくり描きこまれた線たちによって、型紙と同じシルエットが画用紙に次々と現れる様子を発見する度に、色えんぴつの走る力強さが増していきます。そんな様子を少し離れて見守るのは、とても感動的な時間となりました。色えんぴつが走れば走るほどに新しい閃きが宿る様な、そんな楽しげな子どもたちの眼差しが印象的でした。
(造形活動講師・高橋智力)

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