幼稚園生活
今回の「たいこばしくん通信」は特別編です。
園児たちの造形活動の講師を務めている高橋智力先生は、ご自身もかつて成城学園で学び、その後、スイス、イタリアへ留学、彫刻家として活躍されています。
現在、高橋智力先生は「国際アートシンポジウム・スナゴヴ フォレスト 1」に参加する為に、ルーマニアで作品の制作中です。制作の様子が写真とともに届きましたので、現地からのレポートを前後編でお届けします。
ルーマニア便り【前編】
「国際アートシンポジウム・スナゴヴ フォレスト 1」に参加する為に、ルーマニアに来ています。ルーマニア首都のブカレスト周辺にはいくつかの美しい川や湖がありますが、その郊外に位置するスナゴヴという湖沿いにある街があります。この街の静かな湖に沿う様に点在する邸宅が制作会場、兼参加アーティストの滞在拠点となっています。
地図を広げると少し東に隣国ウクライナがあるこのルーマニアが、コロナ・パンデミック明けの象徴のひとつとして、テーマパークの再開や商業施設のオープニングイベントではなく、今回の様な国際アートイベントを行おうとするところに何ともヨーロッパらしさを感じています。
一般的にはドラキュラ発祥の地として語られる事が多い東欧の国、ルーマニアですが、アートの国としても知られています。私が最も強い影響を受けている彫刻家イサム・ノグチ氏が師事したコンスタンティン・ブランクーシの母国で、これまでにも度々私自身の作品を発表させて頂いている国でもあります。
私の作品は金属素材を使用したものが多いのですが、そんな私に木の彫刻制作を打診してきたのは、「木の国ルーマニア」という個人的なイメージを抱いていた私にとっても自然の流れで、特に違和感なく今回の作品づくりに向き合っています。実際に豊かな水と日差しのあるこの国は、657万haという森林を有している国で、この面積は国土の27.5%に相当するそうです。そのうちの約半分が国有林で、木材の自給率は100%という話なので、その木材環境は非常に豊かで、実際に上質な木材に出会う事ができます。
今回、真夜中に到着したその翌日、時差ぼけのおかげでとても元気な状態で木材選定に行ってきました。どこでもそうなのですが、それぞれの国や土地の得意分野で行動しようとすると、ことの他いろいろな事がスムーズに運びます。木材選定を終えたさらにその翌朝には、私の名前がマークされた丸太が製材所に運び込まれ、朝のうちに下処理を終えてそのまま会場に搬入されてきました。さあ、これから制作スタートです。
私の彫刻制作拠点のあるイタリアをはじめとする西側のヨーロッパ諸国の事を知る人は多いと思いますが、反対の東側、特にウクライナのすぐ隣の国であるこのルーマニアという国で今どんな景色が見えるのか、制作の様子と共にお伝え出来ればと思っています。
10月のルーマニアは普通なら雨が降っては気温が下がりを繰り返すという日々が続くらしいのですが、幸運にも晴れ続きで朝方の気温は9度台ではありますが、チェーンソーを1日外で振り回すにはちょうどいい気温で、とても気持ちの良い晴れが続いています。
基本的には屋外での制作なのと、木の作品なので濡れてしまうと少し面倒なことになりがちなのですが、この先の天気予報を見てもしばらく晴れが続きそうです。製材された丸太からの粗削りの作業風景をお届けします。
ちょうど今から1週間前なのですが、韓国からの参加アーティストがダイヤモンドディスクで太もも内側を切り込んでしまい、ちょっとした騒ぎになりました。骨がディスクを受け止めて止まってくれたのですが、こういった事故がわりと制作現場にはつきもので、単独での制作は避けて必ず複数人で制作することを心がけています。
今回も傷は深かったものの、大事には至らなかったので何よりでした
今週末は、フランスをはじめとしたヨーロッパで活躍した、ルーマニアの巨匠ブランクーシの故郷を訪れる予定です。私たちのいる首都ブカレストからクルマで片道4時間ほどの旅だそうです。
またお便りしたいと思います。