幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

 久しぶりに活気あふれるお子さんたちの声が幼稚園内に響き、いよいよ2学期が始まったと実感します。まだまだ園庭ではセミが元気に鳴いていますが、それと同時に真っ赤に熟れた柿の実がなっていたり、お子さんたちがドングリ集めに熱中していたりと、少しずつ秋の気配も感じられるようになってきました。

 約1か月ぶりのクラスのお子さんたちとの再会。年少組ですので、喜んで元気に登園してくるお子さんたちがいる一方で、久しぶりの幼稚園に戸惑うお子さんもいるかな?と考えていました。多くのお子さんたちが笑顔で登園する中、「お母さんがいい」「ドキドキして嫌だ…」などと涙するお子さんもやはり数名いました。そのようなお子さんには、「久しぶりに会えて嬉しいわ」と笑顔で伝えることや、一緒に過ごす時間を多くとることを心掛け、不安な思いを受け止めたり、スキンシップをたくさんとって気持ちが落ち着けるように関わったりしてきました。1学期の頃に比べて気持ちが切り替わるまでの時間は日に日に早くなっています。緊張や不安もあった中、友達や教師と過ごし、少しずつ幼稚園が自分の居場所だと感じるようになった1学期の楽しかった記憶があるからこその姿だと嬉しく思います。

 この数週間、お子さんたちと関わる中で、友達に興味をもち、自ら友達に関わっていこうとする意欲を強く感じます。
 1学期には自分のペースで自分のやりたい遊びを楽しんでいたり、「先生、おいで」「先生、一緒に行こう」「先生、何してるの?」と教師を求めていたりしたA君(この時期は、「幼稚園が楽しい!」「幼稚園は自分の居場所だ!」と感じられること、そして教師との信頼関係をしっかりと築くことが大切だと考えているので、A君のこの過程はとても良い段階を踏んでいると捉えています)。そんなA君が、同じ場に居合わせたB君とミニカーで遊び始め、随分と長い時間友達と一緒に遊べるようになりました。そして、「先生あっちで遊んでもいい!?」と大きな声で聞いてきたかと思うと、B君と「きゃっきゃ♪」と走っていってしまいました。
 こうして友達と楽しく遊んでいる成長を嬉しく思い、見守っていると、「今、僕が使っていたのに取られた」「だって僕も使いたかったんだもん…」など言葉が足りないがために思いがぶつかる場面もまだまだ多いのも事実です。それぞれのおもちゃを使いたかった思いを受け止めつつも、「友達の顔を見てごらん。どんな顔しているかな?」と自分とは異なる友達の思いに気付けるように声をかけることや、「急に取られたらビックリするけれど、貸してと言えば友達も分かるよ」と具体的な言葉を知らせた上で友達に思いを伝えるところは直接自分が行うように促すことを意識しています。友達の思いを想像したり、教師が代わりに行うのではなく自分でできたと実感したりすることが、お子さん自身が友達とより良い生活を送るためにはどうしたら良いのか当事者として自ら考え、実行する力に繋がると信じているからです。

 また他にも、こんな可愛い出来事もありました。部屋での自由遊びの時間、Aちゃんがままごとコーナーから絵本コーナーに向かって歩いている時、置いてあった椅子にぶつかり、転んでしまいました。肘を打ったので、すぐに保冷剤で冷やして対応しました。「1番痛いところに当ててね」と渡してしばらくすると、さっきまで一緒に遊んでいたBちゃんとCちゃんがAちゃんの近くに駆け寄りました。頭を撫でてくれたり、顔を覗き込んだり、とても心配しているようでした。その後、Aちゃんの代わりに2人で保冷剤を持ち、肘を冷やしてあげていました。「あら、なんて献身的で可愛いのでしょう」と微笑ましく思って見ていました。今度は2人が人形用のお布団を持ってきたので、「そろそろ遊びの続きを始めるのかしら?」と思いました。すると、お布団に寝るようにAちゃんを促し、再び肘を冷やしてあげていたのです!浮かない表情だったAちゃんも、嬉しさを抑えきれないニコニコした表情に変わっていました。「Aちゃん、嬉しいね!」と声をかけると、頷くAちゃん。そんなAちゃんの様子を見て、Aちゃんの看病(⁉)をしてあげていたBちゃんとCちゃんも満足そうな表情でした。今回、Aちゃんは困った時にありのままの自分に寄り添って助けてくれる仲間がいるという安心感を味わうことができました。また、BちゃんとCちゃんは、Aちゃんの思いに共感し、Aちゃんのために何ができるか自分たちで考えて行動を起こしました。そして、Aちゃんの喜ぶ顔を見ることができました。主体的に行動したからこその充実感はこの上ないものだったと思います。それぞれの立場において素晴らしい学びがあったと考えますが、それ以上に私はこの3人に漂っていた“友達を思いやる温かい雰囲気”を感じ取っていた様子を、とても嬉しく思います。この心地よさが「友達と関わりたい」という意欲をまた更に育ませてくれますね。

 2学期は日々の教育だけではなく、遠足、運動会、文化祭、クリスマス会など行事も盛り沢山です。これから友達とどう関わりながら自分たちの幼稚園生活を展開していくのか楽しみですし、私も一緒に関わりながら引き続き見守っていきたいです。

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