幼稚園生活
感染者数の高止まりや状況の長期化が危惧され、心が落ち着かない日々が続いていますね。そのような状況下でもお子さんたちと接していると、常に自分の気持ちに素直で、物事に前向きで、ふさぎ込んでいる暇はないとパワーをもらいます。
最近の年少組は、年中組に進級することをとても楽しみにしています。2月のある日、クラスでの集まりの際にA君の誕生会をしました。おもちゃのケーキにろうそくを立て、「おめでとう」と言葉のプレゼントやたくさんの拍手を送り、皆でお祝いをしました。誕生会の最後に「次は3月○日に誕生日を迎えるB君の誕生会をしましょうね」と伝えると、すでに誕生日を迎えたお子さんたちから「僕の次の誕生日は?」と自分の誕生日を楽しみにしている声がたくさん上がりました。「皆の次の誕生日は、年中さんになったらお祝いしてもらおうね。楽しみね」と答えると、「僕はすみれ組になるからさぁ!」とまるで決定事項かのように言うあるお子さん。それを聞いて、その後は「私はたんぽぽ組」「私もすみれ組になりたい」など年中組のどちらのクラスになりたいかという話題になりました。どちらのクラスになるか、希望通りになるかはまだ分かりませんが、ほとんどのお子さんが自分の中で答えは決まっていて思わずクスッとしてしまいました。この信じて疑わない様子がまさにこの時期のお子さんらしい可愛い姿だなと思いました。
お子さんたちと進級について話をしていたら、「いよいよ今年度も終わる…」と何だかしんみりとしてしまいました。今年度も分散保育やZoomでのリモート保育をした時期もありました。“安全”であることは何より大切ではありますが、今まで当たり前だと思っていた人と触れ合うことがどれほど幸せだったか痛感します。
年少のお子さんたちは、昨年入園するまでは主に家庭で保護者と触れ合って過ごしていました。そして、入園して集団での生活を始め、この1年間を通して教師や友達とたくさん触れ合う経験を重ねてきました。
先日、自由遊びの時間に5人程のお子さんたちと氷鬼を楽しみました。最初に、誰が鬼をするか鬼決めをしました。皆で輪になって片足を出し、「お、に、き、め、お、に、き、め、お、に、じゃ、な、い、よ(鬼決め 鬼決め 鬼じゃないよ)」と言いながら順番に足を指さしていきます。「よ」で指さされたお子さんは“鬼じゃない”ので輪から抜けます。それを繰り返し、最後まで残ったお子さんが鬼になります。以前は、指さす役を「自分がやりたい!」と何人ものお子さんが主張し、「ではどうするか?」「じゃんけんで指さす人を決めるか?」などと話し合いが始まり、もはや氷鬼どころではない…という時もありました。それが、この日はあるお子さんが最初に指さす役をした後、「じゃあ、次はCちゃんやって」と声をかけ、Cちゃんが「お、に、き、め…」と鬼決めを進めました。それが終わると「今度はD君やったら?」「まだEちゃんがやってないよ」などと口々に言い、皆が1回ずつやって無事鬼を決めることができました。私が一度も口を挟むことなく、自分たちで鬼を決めたことに感動しました。大人が介入することで物事をスムーズに進め、一見綺麗に生活を送っているように見せることは簡単ですが、私たちが目指している教育はそうではありません。自分たちの問題に気付き、その解決策を自分たちで考え、試行錯誤しながらも自分たちで作り上げていく集団であってほしいと願っています。たかが氷鬼の鬼を決めるだけのことかもしれません。それでもお子さんたちは着実にその一歩を踏み出していると感じられる出来事でした。さて、肝心の氷鬼ですが、こちらも遊びが長続きするようになったり、捕まった友達が友達にアイコンタクトを送って助けを求めたり、鬼のお子さんが諦めずに何度も逃げる友達を追いかけたり…成長を感じる場面がたくさんありました。また、正直お子さんよりも私の方が必死に走っていて、体力面においても随分逞しくなったと嬉しく思っています。
振り返ってみると、今年度はお子さんたちと追いかけっこ、ため鬼、色鬼、しっぽ取り、影踏みなどいろいろな鬼ごっこを楽しみました。これら1つ1つの経験が先日の氷鬼の時の姿に繋がったのではないかと感じます。
入園当初の4月。青々とした葉っぱが綺麗で、木漏れ日が気持ち良い季節でした。大好きな保護者の方と離れるのが寂しく、不安そうな表情を浮かべていたり、「いつママはお迎えに来る…?」と涙ながらに聞いてきたりするお子さんも多くいました。そのようなお子さんたちも、園庭に出るとぽかぽかのお日さまや爽やかな風を感じ、笑顔になる様子が見られました。「待て待て~」と追いかけると「キャッキャ」と笑い声をあげながら教員に追いかけられるのを楽しんでいました。この時は、まずは幼稚園がお子さんにとって安心できる場になること、そのために教員がお子さんと遊びの楽しさを共有し、温かい関係を築くことを大切にしていました。そして、毎日一緒に過ごしているうちに、教員に「追いかけっこしよう」と誘いに来てくれたり、他のお子さんと追いかけっこをしていると「捕まえた!」と教員に抱きついてきたり、お子さんとの距離が着実に縮まってきていると実感できるようになってきました。
2学期も落ち着いてきた10月。青く澄んだ秋の空が気持ちまで晴れやかにしてくれる季節でした。幼稚園生活の流れも分かり、また少しずつ視野も広がってきて、興味をもった遊びに積極的に関われるようになってきました。朝の支度が終わると「大きい組さんのお部屋に行ってきます!」と教員に伝え、力強く1人で歩いて行って大きい組さんとの遊びを楽しんでいるお子さんもいました。この頃、年中長組がしっぽ取り(ルール:しっぽに見立てたハチマキをズボンやTシャツなどに挟み、鬼から逃げる。しっぽを取られたら鬼の仲間になる)に熱中していることが多く、数名のお子さんたちも入れてもらいました。4月に追いかけっこを楽しんでいた時は、教員(大人)との遊びを楽しんでいましたが、友達との集団遊びへと発展していきました。ただ、年少組だけで遊ぶとまだまだ長続きしなかったり、「やめる」と早々に遊びから抜けてしまったりすることもありました。しかし、お兄さんお姉さんたちの力を借りることで、遊びに迫力が出るため年少組のお子さんにとってより刺激的で、少し長く遊べるようにもなってきました。この楽しかった経験が、「またやりたい」という意欲に繋がり、次の日もまた次の日も…と遊びが継続していくようになりました。わざと鬼に「お~い、ここだよ~」としっぽを見せるのに、いざ取られたら悔しくて大泣きしているお子さんもいて、ルールのある遊びは難しいことも多く、理解し始めた段階かな…とも感じました。
1年間のまとめの時期に差し掛かった1月。木々の葉っぱもすっかり落ちて、寒さが身に染みる季節でした。皆で遊んだり集まったりする楽しさを知り、「○○ちゃんと遊びたい」などと“自分のやりたい遊びをしたい”という思いだけではなく“友達と一緒に遊びたい”という思いも強くなってきました。クラスとしても集団遊びの楽しさを味わってほしいと考え、一斉活動でため鬼(ルール:白帽子の逃げる人は、赤帽子の鬼にタッチされたら、赤帽子に変えて鬼の仲間になる)をしました。しっぽ取りの際にいざ取られたら泣いていたお子さんがいたことや、最後まで逃げ切ることだけが楽しいのではなく皆で力を合わせて最後の人まで捕まえる楽しさもあることを感じてもらいたかったことから、ルール説明の際に「タッチされたらどうする?『捕まって悔しい!もうやめる!』って言って、遊びから抜ける?」と投げかけてみました。すると、「えー、そんなことしないよ~」「そんなの恥ずかしい~」と皆が笑いながら即答しており、何だかとても頼もしく感じました。実際にやってみたらやはり悔しくて…というお子さんもいるかな?と思いましたが、本当に投げ出すお子さんは1人もおらず、皆でニコニコと力を合わせて逃げる人を捕まえようとする姿が印象的でした。
今まで“自分”または“自分と大好きな親御さん”という人間関係の中で生活していたお子さんたちが、この1年間を通じて、“教員”そして“友達”とぐんぐん世界を広げていきました。そして4月には初めて進級をし、自分たちがお兄さんお姉さんになったという成長をより一層実感することとなります。その自信を元に、更に友達との触れ合いを深めていけるよう、引き続きお子さんたちを見守っていきたいと感じる今日この頃です。
今年度も「たいこばしくん通信」をご愛読いただき、ありがとうございました。昨年から続く感染症との闘いの1年でしたが、子どもたちの逞しい生きる力と、皆様のご協力のお力のおかげでここまで進んでくることができました。感謝申し上げます。
来年度も、どうぞよろしくお願いいたします。