幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

今回は先日、年長組のクラスで起きた子ども同士のやりとりを皆さんにお伝えしたいと思います。

自由遊びの時間、私がクラスの子どもたちの遊びの様子を見ていると、AちゃんがBちゃんの背中を叩く場面を目撃しました。

Bちゃんはすぐに「先生、Aちゃんが叩いた」と訴えてきました。私がBちゃんに「何でAちゃんに叩かれたのか分かる?」と聞くと「分からない」ということでした。するとBちゃんはAちゃんのところへ行き、話し始めました。

B:何で叩いたの?
A:だってBちゃんが指をぎゅってしたから痛かったんだもん。
B:でも優しくやったから痛くなかったはず。

2人のやり取りを少し見ていましたがなかなか話が進まず平行線になりそうだったので私も言葉を足して二人の思いを補いました。

私:Bちゃんは優しくやったつもりかもしれないけどAちゃんは痛かったし嫌だったんじゃないかな?
A:そう。嫌だったの。なんで指をぎゅってしたの?
B:こっちに来てほしかったから。
私:なるほど。BちゃんはAちゃんに痛いことをして困らせるつもりはなくて一緒に遊びたかったのかな…。二人とも何だか痛いことになって大変だったね。

AB:うん…。

少しの間、沈黙がありました。
二人はこの先どうするのだろうと様子を見ているとBちゃんが考えてから話を切り出しました。

B:でも…私が指をぎゅってしなかったらAちゃんは私を叩かなくて済んだんだよね。ごめんね。

私はBちゃんのこの言葉を聞いて涙が出そうになりました。自分が先にやってしまったことで相手に嫌な思いをさせてしまったことに気が付き、その状況を言葉で伝え謝ることができたこと、本当に素晴らしいと思いました。

するとAちゃんもBちゃんの言葉に心が動かされたのでしょうか。

A:私も、ちゃんと言葉で嫌だって伝えられなくてごめんね。
と言ったのです。

二人は自分たちで解決の道を探し、答えを出しました。教師に言われたからではなく、自分で考えた心からの言葉だからこそ、Aちゃんにも響き、気持ちが動かされたのではないでしょうか。AちゃんもBちゃんも、相手を責めるのではなく、最後は自分の悪かった行動に気が付き反省して謝ることができました。
自分のしてしまったこと(特に自分にとって都合の悪いこと)を素直に認めるのは、大人でもとても難しいことです。相手を目の前にして素直に自分の良くなかったことを反省し伝えることができたのはすごいことだと思います。

私は「二人の話し合いで問題を解決できたこと」、「自分たちの力で考えて答えを見つけたこと」、「相手の気持ちを理解し、自分の良くなかったところを素直に認めることができたこと」を褒め、二人の手に指で花丸を描きました。くすぐったいと言いながらも、嬉しそうに照れて顔を見合わせる二人を見て私も幸せな気持ちになりました。

この日の帰りの集まりの際に、他の子どもたちにも一連のやりとりの話を伝えました。誰と誰のやり取りということは伝えずに話しましたが、この話を聞いたクラスの男の子C君は「それはすごいね!パチパチパチ♪」と言いながら拍手を送ってくれました。すると他の子たちも、「たしかに、それはすごい!」と次々に拍手をしました。AちゃんとBちゃんは、自分のことだと分かっていたので、ニコニコ顔です。クラスが温かな雰囲気に包まれました。

年長組は成長している分、友達とのやり取りもより複雑になり、その度に悔しさや葛藤など様々な感情が生じます。しかし、それと同時に相手の気持ちを理解する力や、友達の持つ良いところに気付く力も大きく育ってきています。

幼稚園生活最後の1年。
お互いに尊重し合い、思いやり溢れる温かなクラス作りを今後も心掛けていきたいと思います。

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