幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

 3月17日、40名の子どもたちが成城幼稚園を卒園していきました。
3月に入り、子どもたちが見通しを持てるように、卒園式までの予定を書いたカレンダーを掲示した頃からでしょうか。子どもたちは「あと○日しかないね」「もう少し幼稚園にいたいね」「寂しいな」と話すようになりました。4月から始まる新しい生活への期待と同時に卒園の寂しさを感じているようでした。
 それは担任の私も同じ気持ちでしたが、「まだ○日あるね」「お楽しみもいっぱいあるね」「お別れは凄く寂しいけど楽しく過ごそうね」と寂しい気持ちに共感しつつ、前向きな声をかける日々が続きました。

 年長組にとっては幼稚園生活の集大成となる大事な年で、この1年で心も体も大きくなり、毎日色々なことがあって、乗り越える度に成長してきました。
 
 「大繩跳び100回跳べるようになった!」記録を更新するたびに顔を真っ赤にし、嬉しそうに報告してくれる子どもたち。跳べるようになるまで何度も何度も挑戦する姿がありました。教師もまた一生懸命に取り組む子どもを見守り、一緒に跳べた数を数えながら何度も大きく縄を回し続けました。遊びを通して目標に向かい、粘り強く挑戦し続ける力がより一層身に付いたように思います。

 「小さい組さんのお世話をしてきたよ」そう言って誇らしげに自分のクラスに戻ってくる子どもたち。昨年までは自分たちがお世話してもらう立場でしたが、大きい組さんに優しくしてもらったように下の学年に優しくしてあげていました。自分が優しくされて嬉しかった気持ちが心に残っているからこそ、自分も同じようにやってあげようと行動できたのだと思います。卒園する数日前に行われたお別れ会では年少、年中の子どもたちが年長組のために楽しく、温かい会を開いてくれました。会が終わり、皆に見送られ嬉しそうに部屋へ戻ると、「皆が小学校に来たら優しくしてあげたい」「色々おしえてあげたい」「何かお返しがしたい」と話す子どもたちの様子をみて、胸が熱くなりました。そして「皆のその気持ちが先生はとても嬉しいよ」と伝えました。

 「トイレのスリッパを全部綺麗に並べてきたよ」と沢山の子どもたちが自分が使った分だけではなく、離れ離れになっていたスリッパを揃えてくれたことを報告してくれるようになりました。次に来る友達が使いやすいように配慮できるようになりました。子どもたちが誰かのために何かをする気持ちよさを感じられるようになったことが教師として嬉しく、「いつもありがとう」「助かるな」と感謝の気持ちを伝えるとニコッと可愛い笑顔をみせてくれました。

 泣いている友達がいると、自分がしていた遊びを中断し、「大丈夫?」と声をかけ背中を擦ってくれたり、ティッシュを持ってきてくれたりもしました。大好きな友達を心配して寄り添おうとする優しい心が、幼稚園で一緒に過ごす時間と共に大きくなっていきました。
また友達は大好きな存在であると同時に、ライバルでもあります。心の距離が近い分、時にはぶつかることもありました。年長組には自分を信じる強い思いや意思があるので、相手の意見を受け入れたり、折り合いをつけるのが難しく、両者が納得するまでに時間がかかることもありました。自分たちで考え、話し合い、解決していく力を信じて、すぐに仲介することはせずに、見守ったり、両者の思いに共感し、冷静に相手の考えに耳を傾けられるよう促したりしてきました。結果、どんなにぶつかって泣いた日も次の日にはまた一緒に遊んでいました。それはやっぱり大好きな友達と遊ぶことが楽しかったからでしょう。このように友達と過ごす日々を通じて、幼稚園でしか味わえない楽しさや、自分の思いを言葉で伝える大切さに気付いたり、相手を思いやる心を育まれました。

 様々な行事を通して皆で協力し合い、達成することで団結力が一段と強くなることもありました。3月のひな祭りでは、時間にすると1グループ数分間の劇の発表になりますが、本番を迎えるまでのお話作り、演出には年長ならではの話し合いや意見のぶつけ合いがありました。あるグループでは「お客さんに分かりやすく伝えるにはこのシーンは小道具を使ったほうが良い」とA君が提案し、実際に小道具を使って練習してみました。やり終えると次の話し合いが始まり、小道具を使うとそればかりに集中してしまって、舞台の上でお客さんにお尻をむけてしまう」と、子どもたちで真剣に話し合っていました。どちらの考え方も劇を良くしていこうという共通の目的から出ているもので素晴らしい話し合いだと思いました。結局このシーンについては小道具を使わず、体で表現することに子どもたちで決めました。
 また自分たちがどのような姿で演じているのかがわかるように教師が撮影をし、それを子どもたちに見せたときのことです。教師としては頑張っている姿を認めたり励ましたりしながら自信を持たせたうえで、「皆出来ているから、もっと良くなるためにはどうしたら良いか」を伝えるつもりだったのですが、子どもたちから出た言葉は「悪いところを教えて!」でした。最高の演技にしたい、そんな思いが伝わってきました。そして自分たちの演技をみては頭を抱えながら一喜一憂していました。自分のセリフだけではなく、友達のセリフも覚え、友達が緊張から言葉に詰まると、小声で教えてあげるような姿もありました。子ども同士で声を掛け合い自主練習をしているグループもありました。更に本番までの日にちを考え、見通しを持って練習している姿もあり、担任としては、子どもたちの成長を確認でき嬉しい日々でした。
 こうして繰り返し練習をして本番を迎え、発表が終わると子どもたちは達成感に満ち溢れていました。

 この1年で子どもたちは沢山の表情を見せてくれました。どの場面を思い出しても笑顔や、子どもたちの笑い声ばかりが思い出されます。幼稚園で過ごした楽しい思い出を胸に、これからの人生自信を持って歩んでほしいと思います。離れていても心は繋がっています。卒園児には教師はいつも幼稚園から応援していることを伝えて送りだしました。

今年度も「たいこばしくん通信」をご愛読頂き、ありがとうございました。

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