幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

 11月3日(祝・火)は幼稚園の文化祭です。成城幼稚園では毎年、ホールに年長・年中による共同製作を展示しています。まず、年長組がテーマを考えます。「テーマって何?」というところから話し合いが始まります。様々な意見がでた後で決まった今年度のテーマは「たのしいせかい」。次に、5つの作品を決めていきます。沢山の候補があがりましたが、「くるま」「ちーたー」「ひみつきち」「ほうせき」「りゅうぐうじょう」の5つに決まりました。そして、自分が作りたいものを決めたら準備完了です。
 年中組にとっては初めての参加となる共同製作!「大きい組さんが作っていたよね!」と昨年の文化祭の様子を思い出している子もいました。今年は自分たちの番だと分かるとワクワクした表情で「やりたい!」と声があがり、やる気十分です。年長組が考えてくれたテーマと5つの作品名が発表されると、「ひみつきち!」と既にやりたいものを決め挙手する子や、嬉しそうに友達と顔を見合わせたり、大変な騒ぎです。
 グループ決めでは、友達と一緒に決めるのではなく、自分の意思で決めることを繰り返し話しました。自分がやりたいものでないと、製作途中でやっぱり他のものを作りたかった、と気持ちが途切れてしまうことがあるからです。自分が本当に作りたいと思うものはどれか、自分で決める。これが鉄則です。この年齢には難しい選択だと思いますが、教師の助けも借りながら最終的には全員がグループを決めることが出来ました。

 1日目、グループの友達や担当する教師と顔合わせです。少し緊張している様子の子もいます。鉛筆や画用紙を用いて設計図を書いて、それぞれのイメージを擦り合わせていきます。
 2日目には素材の紹介です。普段使わないような素材や道具もあり、キラキラの紙に目を奪われたり、段ボールカッターにも興味津々です。また、段ボール同士を繋ぐには何を使うか、どこを留めるか、テープの長さはどれくらい必要か?実際に教師がやって見せながら考えていきます。その後、各グループに分かれて素材を使い、作品の核となる形を作りました。
 3日目からはグループごとに集まり、早速話し合いや活動にとりかかります。製作では、昨年経験している年長組がリードしてくれて、スモックのボタンを留めるのを手伝ってくれたり、硬いガムテープを切って渡してくれたり、優しく面倒を見てくれました。ある年中組の子が「私のお姉さん優しいんだよ。抱っこもしてくれたの♡」と嬉しそうに話してくれました。また、昨年の経験を覚えていて、「前にね、鉛筆を使いたいなって思っていたら、年長さんが貸してくれたの!貸してって言ってないのに貸してくれたんだよ!!」と目を輝かせて話す年長組の女の子。嬉しかった経験を覚えていて、自分の中に、優しく頼れる年長組のイメージがあるのだな、と感じました。こうした経験は、年長・年中、双方にとって自己肯定感や自尊心を育みます。家庭的な雰囲気の中で兄弟姉妹のようなかかわりができるのは、少人数だからこそだと言えます。
 製作期間中は、クラスでの集まりにも変化があります。自分のグループが今日どんなことをしたのかを発表する時間を設けていましたが、「絵の具を塗って楽しかった」「キラキラを沢山つけたの」「僕の背よりも大きくしたんだよ!」と得意気に話す子と、それを聞いて「知ってる!ホールで見たよ!」と他のグループの作品にも興味を持っている様子が見られました。いつものクラスの活動とは違い、それぞれが違うことをしてそれを共有して刺激を受けたり、活動が終わってクラスに戻ってくるとどこか安心したように、ふっと気が緩むような姿もあり、自分たちの居場所を再確認しているような気がしています。

 自分でグループを決めること、グループの中で自分の考えを主張すること、友達の意見に耳を傾けようとすること、意見を聞いてまた考えること、相談した結果を協力して形にしていくこと。6日間にも渡る長い活動で、根気も必要になります。時には意見が通らずに悔しい思いをしたり、我慢することもあります。自分で選んだとはいえ、途中で遊びたくなってしまったり…。子どもたちにとって簡単な活動ではなかったと思いますが、普段とはまた違った力を発揮してくれました。
製作期間中の降園後には教師が集まり、その日の子どもの様子や進捗状況、必要な素材の相談を日々重ねて情報を共有していました。このように、子どもにとっても、教師にとっても、全てのグループ沢山のドラマが詰まった作品です。

 昨年度より、ICT教育の一環として、学内の専門家の協力を得て、タイムラプスカメラを導入しています。ホールに設置した4方向からのカメラで撮影した動画を編集し、6日間の子どもたちの製作風景を見ることが出来ます。みるみる出来上がっていく様子や、真っ暗から段々と朝日を浴びるホールを見るのは大人でも面白いものです。
共同製作の展示付近で動画を放映し、保護者の皆様にご覧頂けます。

 文化祭では、共同製作の他に保育室に各学年の個人製作も展示しています。担任を中心に趣向を凝らした、今の子どもたちの興味を捉えた作品の数々です。その準備、活動、展示には教職員一丸となってあたりました。
 今年度は限られた人数での保護者のみの公開で、多くの方々に来園して頂けないことを教職員一同とても残念に思っています。少しでも幼稚園の雰囲気が伝わればという願いを込めての写真から、子どもたちの頑張りに、活動の毎日をご想像頂けましたら幸いです。

年少組保育室展示(年少開設時からの伝統の作品と今年ならではのものを織り交ぜて。初めての文化祭、楽しみながら活動しました。)

年中組保育室展示(色々な素材に触れることを経験しながら取り組みました。)

年長組保育室展示(細かな手捌きを必要とする、年長組ならではの作品です。)

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