幼稚園生活
園庭の金木犀が一斉に咲き、甘い香りが秋の深まりを感じさせてくれています。そんなある日、お弁当を食べている時に、「○○ちゃんが内緒話をしている!」という声がして、みんなが一斉に声の方を見ました。側にいた子たちが「いけないんだよ!」と口々に言います。担任は話を聞こうと思いましたが、あまりにも周りが指摘をするので、「どうしていけないの?」と聞くと、思わぬ質問に驚き、答えに詰まっている様子です。そのうちに、ある子が「だって他のお友達が聞きたいって思っちゃうから」と言うと、他の子も同じようなことを言います。「お弁当の時に内緒話をすると喉に詰まっちゃうから」など色々な意見が出てきます。担任が「ご飯を食べていない時だったら良いのかな?」と聞くと、「いけない」という子と「良い」という子に分かれました。それぞれの主張があったので、帰りの集まりの時に話そう、ということになりました。
その後、集まりで、内緒話をして「いけない」という子と、「良い」という子両方の意見を改めて聞いてみました。「いけない」という子は、やはり「他の子が聞けないから」という意見と、「ご飯の時に喉に詰まっちゃうから」という意見が大半です。「良い」という子は、「だって静かにお話したいなって思ってこしょこしょ話になる」などの意見もでました。中には、「先生たちもしてたの、見たことある!」という子まで。(教員同士の連絡事項でしょうか、子どもはよく見ているものです。)
そこで、担任が実演してみて、違いを考えてもらいました。例えば、人がいっぱいいて静かに話さなくてはいけない時、警察ごっこで遊んでいる時、誰かを指差して噂話のようなことをしている時…。子どもたちは担任の演技に合わせて「シー」と静かになったり、笑い声が起きたり、手で「×」を作ったり、真剣に聞きながら考えてくれました。
みんなで相談した結果、内緒話でも色々あって、他の子に聞かれたくない話や聞いて嫌な気持ちになる話、誰かの事を噂するような話は「してはいけない、しない方が良い」、遊びの時に役になりきっている時や、静かな場所で話す時、楽しくて内緒話をしても他の子に聞かれたら教えてあげられる時、には「しても良い」のではないか、という事になりました。
2学期も後半に差し掛かり、子ども同士の仲が以前よりも親密になり、仲間意識が強まっている分、内緒話をすることで絆を感じたり、共有する喜びを感じている姿があります。秘密を共有するのは、どこかワクワクして、相手にとって自分が特別だ、と思えます。その嬉しさは、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。担任にも身に覚えがあり、いくら「いけない」と言われても納得して「しない」ことは難しいと思います。「いけないから禁止」ではなく、「どうしていけないのか」「どうしてしない方が良いのか」また、「しても良いのはどんな時か」を子どもたちが考え、導き出してくれたことを嬉しく思いました。
子どもたちが成長していく過程では、今後もそのような事柄が増えていくと思います。そこで忘れて欲しくないのが、嫌な思いをしたり、悲しい思いをしている子がいないか、と気が付けることです。色々な経験をしていく中で学び、感じながら考えていって欲しいと思いますし、その力がある子どもたちだと信じています。