幼稚園生活

5月21日(木)、年長組で造形活動をおこないました。講師は幼稚園で造形の時間を担当いただいている彫刻家の高橋智力先生です。今回の造形活動では色画用紙で白い画用紙を飾りつけた後、色鉛筆でお絵描きをしました。
「白い画用紙に絵を描きます。でも今日は少し違ったことをします。白い画用紙にいろいろな色の色画用紙を重ねて、絵を描く場所を作ってください」。智力先生の説明を聞きながら、子どもたちは1人2枚ずつ好きな色画用紙を選びました。はさみを使って大きくギザギザに切ったり、ハート形にしたり、細い棒のようにたくさん切ったりと、思い思いの形を作っていきます。「たくさん絵を描くためにはどうしたらいい?」「広げて貼ってみるのもいいね」。先生の問いかけに、子どもたちも考えながら取り組んでいました。
色画用紙を貼る場面では、「のりをなぜ貼るのか、どこにどれくらいつければいいのかを考えて貼ってください」と智力先生から説明がありました。子どもたちは、どの部分にのりをつければしっかり貼れるかを意識しながら、真剣な表情で制作に集中していました。時折、友だちや先生に「これはね…」と作っているものを説明したり、相談したりする姿も見られました。
色画用紙を貼り終えると、その上から色鉛筆で自由に絵を描いていきます。好きなものを夢中で描いたり、カラフルな色使いで表現したりと、一人ひとりの個性が光る作品に。描き方がわからず先生に聞きながら進める子や、完成した作品を嬉しそうに説明し、みんなで笑い合う場面もありました。
最後に智力先生から、「色の組み合わせを考えてみました。1本の線を引いても、色画用紙の色によってもっときれいに見えたり、消えて見えることもありました」とお話がありました。同じ色でも背景の色によって見え方が変わることを、子どもたちは作品づくりを通して楽しく学びました。
1人2枚色画用紙を選びます
のりを貼る場所も一緒に考えました
バラはどうやって描くの?
友だちと相談しながら…
みんな夢中になって作り上げていきます。
作品を見せあって笑い合う場面も
こんなに素敵な作品ができました
ともりき先生よりひとこと
—自分だけの画面をつくる—
今回の活動では、白い四角い画用紙をそのまま「絵を描く場所」として使うのではなく、まず自分自身で絵の世界を創り出すことから始めました。
自ら選び出した色画用紙を自分が面白いと思う形に切り、思い思いに白い画用紙の上へ展開していきます。
白い四角い画用紙の外へ画面を広げていく子もいれば、選んだ画用紙の色彩を活かして画面の内側に色を重ね、ぎゅっと凝縮された世界をつくる子もいます。
さらに、切り抜いた色画用紙の大きさや形、貼る位置が加わることで、出来上がる「絵を描くための場所」はどれも個性が伸びやかに表現されています。
年長ともなると、子どもたちは「絵を描く」という制作にすっかり慣れてきています。
今回は当たり前になりつつあることから、視野を一段階広げ、自分だけの絵を描く為の画面を構築していくことに注目してみました。
いつもの白い四角い紙ではなく、自分で選び、自分で切り、自分で配置した画面。
その上に絵を描くことで、これまで何気なく見過ごしていた色や形の美しさ、思いがけない構成の面白さに出会うことができたはずです。
そして形以外にも、色画用紙の色彩と画用紙の白を組み合わせることで、コントラストが生まれ、子どもたちは自然に色の響き合いを感じ取っていきます。
どの色とどの色を選ぶのか。
白い余白をどのくらい残すのか。
形をどこに置くと面白く見えるのか。
こうした判断の一つひとつが、色を選ぶ力、画面を構成する力につながっていきます。
さらに、その上から色鉛筆で絵を描き加えていくことで、子どもたちはまた新たな発見に出会います。
同じ色鉛筆で描いた線であっても、白い紙の上では明るく軽やかに見え、濃い色の紙の上では少し落ち着いた表情を見せます。
もしくは、ある色の上では鮮やかに浮かび上がり、また別の色の上では静かに溶け込んでいく様子に気がついたかも知れません。
色は、それ単独で存在しているのではなく、隣り合う色や背景との関係の中で、見え方や印象を変えていきます。子どもたちはそのことを、難しい理屈としてではなく、自分の手を動かしながら自然に感じ取っていきます。
この体験は、子どもだけでなく、大人である私たちにも通じるものがあります。
「自分」というひとつの色もまた、国や社会、環境、そして文化的な背景との関係の中で、時に鮮やかに際立ち、時に静かに周囲となじみながら、さまざまな表情や印象を見せていくからです。
造形活動の中で起こる小さな色の変化は、自分と世界との関係を感じる、ささやかで大切な体験にもつながっているのです。
こうして、さまざまな発見や出会いを重ねながら、子どもたちは、選んだ色、切った形、貼った位置、描いた線や絵のすべてを、最後には自分の作品として一つにまとめ上げていきます。
この活動の大切さは、完成した絵の上手さだけにあるのではありません。
自分で選び、自分で考え、自分で画面をつくり、その中でどのように絵を成立させていくのか。
その自身の判断の積み重ねというプロセスそのものに、大きな意味があります。
子どもたちは、難しい理屈を意識しているわけではありません。
けれども、その制作の中では、色彩感覚、構成力、色彩のコントラストへの気づき、そして複数の要素を一つの表現としてまとめる力が、確かに刺激されています。
一枚の白い四角から始まった画面が、子どもたち一人ひとりの手によって、それぞれに違う世界へと広がっていく。
その過程には、成城学園らしい自由な発想と、自分の表現を組み立てていく確かな力が表れていました。
(造形活動講師・高橋智力)