幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

 まだまだ気温も低く風も冷たいですが、陽射しはぽかぽか暖かく、柔らかに感じられる日も増えてきました。2月も後半に差し掛かってきたある日、園庭で遊んでいる子どもたちと一緒に、小さな顔を出しているふきのとうの芽を見つけました。iPadで写真を撮って、集まりでクラスの子どもに見せると、「わぁ~可愛い!」「これなあに?」「金平糖みたい!」「本当だ!金平糖ちゃん♪」と口々に色々な感想を言います。開きかけた蕾の葉先の形を見て、「金平糖」とは、子どもたちって何て面白い表現をするんだ!と感心してしまいます。このような、純粋に見たままの、そして今まで生きてきた中で自分の知っている物で例えてくれるお子さんたちの何とも可愛い表現に出会うと、たまらなく愛おしい気持ちになります。

  • 蕾が開きかけたふきのとう:通称「金平糖ちゃん」
    蕾が開きかけたふきのとう:通称「金平糖ちゃん」

  • 少しずつ蕾が開いてきました
    少しずつ蕾が開いてきました

 「これはね、ふきのとうって言うの。冬から段々暖かくなってきて、もう春ですよ、って教えてくれる植物なの。寒い冬の間も頑張って大きくなって、暖かくなってきて顔を出してくれたんだね」と言うと、「ふ~ん!」という子が多い中、「知ってる!ふきのとうって食べられるんだよね!」と自信満々なお子さん。「食べられるの?」と信じられない、という表情で担任を見つめるお子さんも。「辛いから食べられないよね、子どもは」・・・「先生が知っているのは、少し苦い味がするのもあるけど、天ぷらにしたり、お味噌と混ぜたりして食べたら美味しかったよ」と話すと、少し驚いているお子さんもいました。念の為、せっかく出てきた幼稚園のふきのとうは採ったり食べたりしないで、これからどうなるか見てみてね、と話しました。

ふきのとうを見つけて「先生、何かあるよ!」
ふきのとうを見つけて「先生、何かあるよ!」

 これより少し前の、まだまだ寒い日のこと。年長組が「お花屋さん」ごっこをして遊んでいました。たまたま遊びに行った年中組は、折り紙で作られた綺麗なお花に目を奪われ、「先生!大きい組さんがお花屋さんやってる!!」と大急ぎで担任を呼びにきました。数人と一緒に行ってみると、ちょうど年長組の集まりが始まるということで閉店作業をしているところでした。「買いたかったね・・・」ととても残念そうな年中組の子どもたち。担任が「きっと、またやってくれるんじゃないかな」と言うと、「やってくれるようにお手紙書こう♪」と1人の子が提案し、他の子もぱっと表情が明るくなりました。「またおはなやさんやってね。おねがいします」というお手紙とお花を描いて、年長組に渡しにいきました。年長児はお手紙をとても喜んでくれて、「またやるね!」「買いにきてね」と優しく答えてくれました。そして、「これあげるね」とそっと手渡してくれたものを見ると、「おはなやさんちけっと」! 年中児も大喜びで、担任もそのやりとりに心が和みました。もちろん、次の日は朝から「お花屋さんに行く人」で大行列。そして、今やその遊びはしっかりと年中組に引き継がれていて、「お花屋さん」「ジュース屋さん」「いろいろ屋さん」まで登場して、今度は年少組をお誘いしています。

  • 年長さんのお花屋さん
    年長さんのお花屋さん

  • 年中組から年長組へのお手紙
    年中組から年長組へのお手紙

  • 年長のお花屋さんに買いにいく年中
    年長のお花屋さんに買いにいく年中

  • 年中組のお店の看板
    年中組のお店の看板

年中組のお店屋さん

 遊びの中での異年齢のかかわりで、刺激を受けたり、また上の学年は年下の子に優しくしたり、自分たちがやったことが受け入れられたり、また次も喜んでもらうためには、と考えたり。少人数だからこそできる、家庭のような、きょうだいのような温かいかかわりが成城幼稚園にはあります。コロナ禍においては、以前のように120人全員で一緒に活動することが難しい状況ですが、それでも個々の遊びの中で、他学年のすることをよく見ていたり、一緒に遊ぶことで自然なかかわりが生まれています。

 こんなこともありました。ひなまつりに向けて、年中組では劇あそびを発表する予定です。その中で、ある日「森でパーティをするから、ぜひ来てください」という招待状が届きました。それなら、動物になってパーティに行こう♪ということになり、それぞれ自分のなりたい役を決めました。ですが、肝心のパーティの招待状に差出人の名前がありません。すると、「年長さんからじゃない?」「年長さんが、私たちの為に招待してくれたんだよ!」「絶対そう!!」と大盛り上がり。(実際には、年長組ではなく、今後ストーリーが展開していくのですが、子どもたちにはまだ内緒です!)とにかく、自分たちにとって楽しいことをしてくれる、素敵なお誘いをしてくれるのは年長さんだ!と目をキラキラさせている子どもたちを見て、年長組への深い信頼と、憧れの気持ちがいかに大きいかを改めて知りました。

 3月に入ると、年中少組が、卒園していく年長組に感謝の気持ちを込めて「お別れ会」を開く予定です。そこでも、また新たなかかわりが待っているかと思うと、教師も今から楽しみです。

 毎年園庭の一角に沢山の芽を出して、春の訪れを知らせてくれるふきのとう。年長組は卒園に向けて、年中少組は進級に向けて。新しい季節の予感に胸がいっぱいになりながら、今の1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。

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