幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

 子ども達と毎日園内で共に過ごしていると、子ども達の気付きにたくさん出会うことができます。その表現は個性的で意味深く、子ども一人一人の内発的な気持ちに触れたくなります。

 12月の寒さが深まる頃のことです。園庭で3歳児数名と遊んでいると、Aちゃんが「Iちゃんって、優しいよね。」と、私に微笑みました。急な上り坂を登ろうとする友達に対して、Iちゃんが上から精一杯手を差し伸べる光景をAちゃんはじっと見ていました。私は、Aちゃんの微笑む表情と発した言葉に顔を向けて集中し、気持ちを探りました。Aちゃんは、乗り越えようとする友達を救おうとしたIちゃんは優しいと、Iちゃんの心に共感したのでしょう。私はとても温かい気持ちになり、自然とAちゃんと微笑み合い、そして頷き合いました。幼児期の特徴から見ても、4月入園時には家庭の世界からスタートして、園生活に魅力を感じ、遊びを通して友達の存在を発見し、友達の心に気付き、心を感じ取って友達の良さを感じられるまでに成長したAちゃんに深く共感しました。

 日々の保育の中で心掛けていることは、子ども達の気付きや表現を大切にしながら、子ども一人一人と共感することです。共感は、人とのコミュニケーションの中で何倍もの力に変わると信じています。痛い辛い困った時は、気持ちを半減させ、楽にしてくれます。人は困難な時、根本的な解決が出来なくても、微笑んでくれたり、頷き傍らで寄り添ってくれるだけで、救われ一歩前に進めます。子ども達には、幼児期から多くの人とのコミュニケーションを通し、共感を重ねながら、人の温かさをたくさん味わってほしいです。共感から得られた自己肯定感や豊かな心が互いを支えるのだと思います。

 令和の時代になり、期待と好奇心が高まります。時代を生きる子ども達が、社会の中心になる頃には、今とは異なる新しい価値観が生まれているのでしょう。未知の新時代は、予測できない急変化と、新たな価値観を創造していくことでしょう。新時代を生きる成城学園の子ども達には、幼児期から培った人の温かさを忘れず、気付きを表現し、隣人と共感する喜びを感じられる大人へと成長してほしいです。隣人と繋いだ何倍もの力で、時代をリードしてほしいと願います。

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