幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

 秋の気配がますます深まるこの頃。子どもたちは、落ち葉を踏みしめたりどんぐりやまつぼっくりを拾ったりと、秋の自然に親しみながら過ごしています。2学期も半ばになり、最近の年少組は友達に対する興味が以前よりも増してきているように感じます。「一緒に遊んでみたい」、「あのこの隣に座りたい」など、友達と何かをしてみたいという気持ちがよく育ってきています。一方でお互いにやりたいことや意志がはっきりしてきている分、全てのタイミングで自分の思いどおりに行く訳ではないことや、我慢したり譲ったりしなければならない場面も以前より増えてきました。
 先週、A君の隣に二人が座りたがっているけれど、片方にはすでに別の子(Bちゃん)が座っており、残り一席にどちらが座るか悩むような状況がありました。
このような場面で私が大切にしたいと考えていることは、必ず子どもたちに解決策を考えてもらうようにするということです。「大人がこうしたら?」と今までの経験から上手くいきそうな解決策を提案すれば物事は時間をかけずにスムーズに進むはずです。しかし、今の時期に、「(当事者に対して)どうしようか?」「(周りで見ていた友達に対して)こんな時はどうすればいいと思う?」と投げかけ、考えてもらいみんなで絞り出した解決策の方が、子どもたちの中に着実に経験として残ります。

 問題を解決するためには様々な選択肢があり、正解はひとつではありません。子どもたちが自分で考え、納得して決めた答えであることが大切です。周りで見ていた子どもたちからは「ジャンケンをすればいい。勝った方が座るの。」という意見も出ましたが、当事者の二人が「負けちゃったら座れないからそれは嫌…」と言ったので、別の方法を考える必要がありました。そんな時に、困っている友達の様子に気が付いて、もう一方の席を譲ってくれたBちゃん。クラスのみんながBちゃんの姿を見て拍手を送りました。ちょうどクラスの集まりが始まる前の時間だったので、その後の集まりの中で一連のやりとりと、自分が譲れば問題が解決するかもしれないということに気が付いてくれたBちゃんの姿についてクラスの子どもたちと共有しました。
 子どもたちが不思議と感じたり、分からない、どうしようということに対して、「すぐに答えを出さない」ということは、時間がかかり、学習をしていく上で一見とても遠回りのような気がしますが、「自分の力で考えることができる子を育てる」という意味では実は近道です。「すぐに答えが出ない」ということは「考え続けるきっかけになる」と私は考えています。問題解決能力というのは「どのような状況に対しても考えることを諦めない」ということを通して育ちます。そしてすぐに答えが出なくても不安にならない環境を作るためには、答えが出ないという状況のまま放置するのではなく、自分の思いを受けとめてくれたり、一緒にその状況で考え悩んでくれたりする人の存在も必要です。ご家庭でお子さんが「なぜ?」「どうして?」と考える場面がありましたら、ぜひ一緒に「なんでだろうね?」「どうしたらいいと思う?」と一緒に考え、気持ちに寄り添っていただけたら嬉しいです。

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