幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

 年少組が入園してから約1か月という月日が流れました。年長・年中組の子どもたちは年少組の入園を心待ちにしており、自分の朝の支度が終わると年少組の様子を気にかけ、よく手伝いに来てくれました。年少組にとっては、新しい環境での集団生活。希望に胸が膨らみつつも緊張したり、朝一緒に幼稚園へ来た保護者の方とのお別れが寂しくなって涙を見せるお子さんも初めのうちはいました。
 クラスの部屋、持ち物を置く棚、生活の流れ、そして一緒に過ごす友達や教師…。
幼稚園生活では家庭とは違うことが沢山あります。幼稚園ではおもちゃや、お庭の遊具だって自分一人のものではありません。時には自分の順番が来るのを待ったり、友達が使っていたら我慢したり、譲ることも経験します。自分が使いたいものがある時は、見ているだけでは貸してもらえず、言葉で表現しなければなりません。
 そのような様々な「初めて」がある中で、毎日過ごしてきた4月。年少担任と担当教師たちは、何よりもまず子どもたちが少しでも幼稚園で安心して過ごせるようにということを大切に関係を築いてきました。それと同時に自分の好きな遊びを見つけ十分に楽しみ集中できる環境作りを工夫してきました。

 友達同士の関係は、「まだ相手の名前も分からない」という段階です。幼稚園で自分の好きな遊びを見つけ毎日遊べるようになってきた中で、ふとした瞬間に隣に同じおもちゃを使っている友達の存在に気が付き、眺める。たまたまトイレの順番を待っている時に自分の前に並んでいた子・棚が隣同士でよく近くで支度をしている子など、日常での些細なことがきっかけとなり少しずつ自分以外の友達の存在に、興味を持っていくようになります。まだ緊張してしまい、自分で「一緒に遊ぼう」と話しかけるのは難しい子もいるため、教師が一緒に友達に声をかけ、子どもたち同士が繋がりを持てるようにしています。また、クラスの集まりの中でも「この子は○○ちゃんね」と友達の紹介をしたり、「○○く~ん」とみんなで名前を呼んでみるなど、友達に目が向くように、また友達や教師から呼ばれることの嬉しさを味わえるような内容を保育の中に積極的に取り入れてきました。

 5月に入り、連休が明け、最近は春の運動会に向けて少しずつ準備が始まりました。先日年少組は幼稚園で使う体操服に初めて自分たちで着替え、みんなで体操やダンスをするという活動を行いました。家から着てきた洋服を脱ぐ→脱いで裏返しになった洋服を表になるようにひっくり返す→洋服を畳む。体操服の正面を確認して前後間違えないように着る→体操服のズボンの腰のゴム部分を引っ張り、上のシャツを中に入れるなど、着替える上で必要な様々な手順を経験しました。「先生、これで合ってる?」と確認をしたり、「見て見て!!できたよ!」、「綺麗に畳めたよ」と、達成感を味わったりしている子もいました。全員が着替え終わったところで、子どもたちの大好きな「たけのこ体操」と「アブラハムの子」を踊りました。体操やダンスは、4月から繰り返し踊る中で、みんなが同じ動きをしているという面白さや、一体感を得られるようになってきました。この日も体操とダンスを踊り終わると、「もう1回!!」と子どもたちからリクエストが出ましたが、帰りの時間が近づいてきたため、「また今度踊りましょう」ということになりました。子どもたちは目をキラキラさせ、「また幼稚園で踊りたい!」という期待感を持っているようでした。

 そして、この日の帰り、私たち教員にとって、とても嬉しいことが起きました。クラスの帰りの集まりで一日の活動や楽しかったことを振り返ったり、感想を子どもたちに聞いたりしていると、A君が突然椅子から立ち上がり担任の前まで歩いて行きました。そして、「また明日も来るね!」と、ニコニコしながら声をかけたのです。A君にとって、幼稚園は「また明日も来たい場所」になったのだと感じました。「また明日も来るね!」という言葉は毎日登園することが自分の日常で、当たり前になっている年中組や年長組では絶対に聞けない発言です。まだドキドキすることもあるけれども、「幼稚園は楽しい」、「自分は明日もここに来るんだ」、「ここには自分の居場所がある」という意識がA君の中に生まれてきているということが分かり、約1か月一緒に過ごしてきた教師としてはとても嬉しい出来事でした。

 そんなことを考えていると、A君の言葉を聞いた他の子どもたちも同じように次々と立ち上がって、「私も明日も来る!」、「僕も明日も来るの楽しみにしているからね」と担任の目の前まで言いに行きました。
 「ありがとう、明日も待っていますね」と担任が声をかけると、子どもたちは自分たちの思いを受け止めてもらえたと満足し、嬉しそうに自分の椅子に戻っていきました。
 「僕も!」「私も!」と発言してくる様子は、自分の話を聞いてほしいという思いが大きく育ってきている3歳児らしい姿で、何とも微笑ましい光景です。

 幼稚園生活の始まりのこの1か月、年少組にとっては変化が大きく大変なこともあったことと思いますが、徐々に成城幼稚園が「僕の幼稚園」・「私の幼稚園」に変わってきているのを感じます。
「僕の幼稚園」・「私の幼稚園」で過ごす、小さな主人公となる子どもたち。これから沢山のことを学びながら成長していく姿が楽しみです。

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