学園の歴史 / Topics

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【コラム】成城池

2016.08.10

成城池は世田谷地区の貴重な自然の財産

緑豊かな成城学園の自然景観を構成する水景として、また様々な動植物が生息する貴重な自然環境として児童や生徒、学生たちにとって身近な存在となっている成城池。1927(昭和2)年、第1グランド造成の際、土砂採取の跡にできた窪みを利用して造られました。整備作業には父母や生徒も参加したそうで、成城学園創立者・澤柳政太郎が提唱した「教育四綱領」のひとつ「自然と親しむ教育」を実践した手作りの人工池です。周辺住民にも古くから親しまれており、1984(昭和59)年に「せたがや百景」の一つに選定されました。

トンボは13種類!

写真で分かるように、以前は隣を流れる仙川と成城池との水面がほぼ同じ高さでしたが、仙川の河川工事を経て、現在は数メートルの高低差が生じ、仙川という水系から孤立した止水環境となりました。それ故、現在は水位の低下、落ち葉や生物の排泄物に起因する堆積物など環境の悪化が懸念され、繁茂しすぎた樹木によって暗く鬱蒼とした景観になりました。成城学園では2009年に専門機関の調査を実施。「透明度は低いものの水質は概ね良好で、水生生物の生息に障害が出るほどの状況ではない」という結果とともに「成城池のような止水環境は大変貴重な自然環境」という報告が添えられました。全国的に減少傾向にある湿地は生き物にとって重要な場所。調査では、ごく浅い岸辺の植生帯に多くの生き物が集まっていることが分かりました。特に水辺と陸地(緑地)双方の環境を必要とするトンボは広い水辺を好むオオヤマトンボなど13もの種類を確認し、世田谷の国分寺崖線の調査で9種類だったことと比較すると、いかに成城池が恵まれた自然環境であるかが分かります。世田谷区は「みどりとみずの基本計画」で示した「みどりとみずの将来構造図」の中で、砧公園や桜上水一帯と並んで、成城学園をみどりの拠点のひとつとして位置づけています。成城池は、成城学園のみならず、世田谷区にとっても、生き物にとっても、重要な自然環境と言えるでしょう。人と自然が共存できる貴重な「財産」を守るべく、美しい自然環境を提供できるように池の整備改修に取り組む予定です。
(2010年3月発行卒業生向け広報誌『栄光あれや』から)

成城池
仙川が改修される以前の成城池(昭和39年)

2012年に成城池を改修しました。
改修以前は、周辺樹木が生い茂って薄暗く、落ち葉などの堆積物で水深が浅くなっていましたが、池底の堆積物を除去して防水シートを敷設し、周辺樹木も刈り込みました。中の島の護岸に石敷きの浜辺を新設したほか、公園部分の整備も実施し、美しい景観によみがえりました。

成城池