成城教育の「これから」~成城大学~

多面的でトータルに「居心地のいい」成城大学の魅力を積極的に発信していきたい。成城大学 学長 油井雄二
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「個性尊重」は、世界的に見てもますます重要な今日的課題に

2010年4月から成城大学の学長を務めることになりましたが、成城学園全体の発展のためにも大学の役割が大きいことを、あらためて感じています。やはり成城に子どもを入学させたら大学まで預けたいと考えておられるご父母の方は多いと思います。そうした期待にしっかり応えられる大学にならなければなりません。
成城学園には建学の精神として四つの綱領があります。「個性尊重の教育」「自然と親しむ教育」「心情の教育」「科学的研究を基とする教育」です。なかでも「個性尊重」は、世界的に見ましてもますます重要な今日的課題になってきています。これからの時代はグローバル化が進み、さまざまな価値観を持つ多様な人たちと共存しなければならない社会になっていくことでしょう。そこで活躍できる人間は自分なりの価値観をしっかりと持ち、相手の価値観も認められる人間です。成城大学の「個性尊重の教育」はそうした人材育成を担うことができると、私は確信しています。

成城大学独自のゼミの授業を通じて「個性尊重の教育」を

成城大学ゼミの様子成城大学ではこの「個性尊重の教育」を推し進めるために、ゼミを授業の核として位置づけ、全学部でゼミを必修にしています。「個性尊重」という視点を持ち、これまで以上にゼミを充実させることで、学生一人ひとりの能力を高めたいと考えています。本来ゼミの授業は、高校の授業のように与えられた知識を覚えるのではなく、自ら問題を設定し資料を調べ、その答えを見つけて発表するというスタイルを基本としています。
しかし、私が重視するのはそこから先です。つまり、発表を聞いた他の学生たちは、その内容を理解・共有したうえで、発表者に対して自分の考えや論理、価値観で意見を述べます。それを全員で繰り返していくことによって、多様な考えを認識し、同時に自分の考える力が鍛えられ、さらに他者に分かりやすく説明する方法も身につけることもできるでしょう。
その結果、学生一人ひとりの個性が際立ってくるのです。成城大学は、単にゼミを重視しているというだけでなく、「個性尊重」という理念を基盤にしたゼミの授業であることを、この大学の特徴的な学びのひとつとして、もっとアピールしていきたいと考えています。

人間形成を基本とする広く深いキャリア形成

次に成城大学が力を入れているキャリア支援についてお話ししましょう。一般的にキャリア形成というと就職に役立つスキルやノウハウを身につけることを最優先に考えがちです。もちろんそうした能力も大切ですし、そのためのプログラムも充実させています。
しかし私が強調したいのは、成城大学ではキャリア形成の一番の基本に「個性尊重の人間形成」を置いているということです。自分とは何か、自分の個性はどのようなものか、その個性が活かせるキャリアとは何か、自分の個性を発揮できる人生とはどのようなものか。そうした本質的な気づきや問題意識を持ち、そこから自分で考え、自分で選択できるように支援することが、成城大学のキャリア支援です。
確かに内定率が上がることは喜ばしいことですが、私たちはもっと広く深い意味でのキャリア形成を目指しています。
一例をあげますと、MAPという独自のプログラムは一年次からグループディスカッションや集団学習、高校との連携などを取り入れ、大学で何を学ぶのかという目的を早期に意識させることを狙いとしています。 こうした取り組みだけによるものではありませんが、企業の方からの成城の卒業生に対する評価は高いものがあります。協調性があり、他者との関係づくりが上手であり、人柄がよく誠実でよく学ぶという評価は、伝統的に成城の卒業生の特徴でもあります。反面、最近では行動に移すことが苦手、素材はいいのに非常に惜しいとの指摘もあります。一歩の踏み出し、アクションが足りないというのです。
このような認識を踏まえ、現在、一歩踏み出せるようにするにはどうしたらよいのかをテーマとして、若手職員とプロジェクトチームをつくり、キャリア支援の新たなプログラムの開発に取り組んでいます。

「自分の子どもも成城に」と思ってもらえる大学に

成城大学キャンパス私は成城大学に赴任して30年近く経ちますが、当時を振り返りますと、このキャンパスにカルチャーショックを受けたことを思い出します。研究室の下を幼稚園児が楽しそうに歩き、初等学校の児童もキャンパス内で自由に振る舞っていました。緑豊かで適度なスケールのワンキャンパスに、さまざまな世代が共存している。私にとって大きな驚きでした。その人間関係の濃密さと多様性こそ、成城大学の校風にも少なからず影響を与えているに違いありません。しかも新宿から20分ほどの世田谷区に位置しています。
成城の学生が伝統的に持っているフレンドリーで柔らかな都会的イメージは、こうしたさまざまな要因によって形成されていくのではないかと思います。それを私は「居心地がいい」と感じます。ただ「居心地がいい」だけでなく、そこでは最先端の研究も、地道な教育も行われている。
そうしたすべてを包み込む多面的でトータルに「居心地のいい」キャンパスこそ、成城大学らしいのではないかと思います。その心地よさが卒業生にとっていい思い出になっていれば、「自分の子どもも成城に」と思ってもらえるのではないでしょうか。それが、私が大切にしたい成城ブランドです。

どんな未来でも活躍できる成城らしい人材を社会に

成城大学は4学部11学科という多彩な専門分野を用意しています。この大学で学んだ学生は、その入り口はさまざまでも、究極的にはすべての人が安心して暮らせる社会をどうやって創っていくか、どうしたらお金儲けだけに頼らない豊かな人生を送ることができるのか、その制度的な仕組みはどのようなものなのかという、根源的な問題意識や問いかけを持ってほしいと思います。そのことは決して忘れず、常に関心を持ち続ける学生であってほしいと思います。
そのような学生を育てるために、私たちは基礎教養、基礎学力だけでなくキャリア教育にも知恵を絞り、「個性尊重の教育」にこだわります。偏差値や内定率が高いに越したことはありませんが、大学のスローガンである「未来社会に貢献する人材の育成」を使命として私も受け継ぎ、成城らしい人材を、責任を持って社会に送り出していきたいと考えています。どのような時代が訪れようとも、社会に求められるのは確かな個性と問題意識を備えた人間なのです。
ここまでお話ししたことだけでも、成城大学にはたくさんの魅力があります。素晴らしい研究をされている先生方もたくさんいます。私はこうした成城大学のよさが、まだ十分に外に伝わっていないというもどかしさを感じます。もっと声を大にして成城大学の魅力を各方面に発信していこうと考えています。それが学長としての大きな使命のひとつだと思います。