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創立90周年記念式典における式辞要約
兵藤つとむ

成城学園は、 「個性尊重の教育 」、 「自然と親しむ教育 」、「心情の教育」、 「科学的研究を基とする教育 」という四つの「希望理想」を掲げて呱々の声をあげたのでありますが、そこには、大正デモクラシーという時代環境のなかで成城小学校を創始した澤柳政太郎博士の熱い思いが込められております。90年の歴史に照らしてみれば明らかなように、この四つの項目は、個性を尊重し、個々人の天分をそのままに伸ばすことをめざすという成城学園のリベラルな校風を形づくる骨格を成したものであります。

元学園長の加藤一郎先生は、20年ほど前、澤柳博士の教育論の増補版を刊行するにあたって、先生の掲げた教育の理念・理想はいまも「水の湧いてやまない泉」のように思われると述べておられますが、その際、今日の時点において成城学園の教育に付け加えるものがあるとすれば、「国際化」と 「社会との連帯 」の二つであろうと言われております。20世紀の末葉以来、グローバリゼーションの進展の下で、社会と学校、とりわけ大学との関係のあり方があらためて問われていることを思えば、四つの「希望理想」、二つの時代的要請は私どもが引き継いでいくべきものと言っていいかと思います。

日本は、いま、第二次大戦直後の教育改革にも比すべき大きな改革の季節を迎えており、いまや同世代の若者の2人に1人が大学に行く、いわば〈大学の大衆化〉時代となりました。

〈大学の大衆化〉時代の到来は、学校教育、わけても大学教育に新たな課題を突きつけております。一つは、大学が、エリート養成の機関を超えて、一個の職業人としてそれぞれの持ち場において社会の結節点を担う市民の育成の場たることを求められているということであります。そしてまた、少子化の影響を受けて、今年あたりから大学全入時代に入ったと言われております。志望校をめぐる厳しい受験競争は依然続くものと思いますが、こういう事態はこれまでの学校が学生・生徒を選抜する時代から学生・生徒が学校を選ぶ学校間の厳しい競争の時代へと移りつつあることを意味しております。こうして、いまや、それぞれの学校が個性にあふれた魅力ある学校づくりに鎬を削る時代となりました。

わが成城学園は、九十周年を迎えた本年も、幸い幼稚園から大学まで多くの入学志望者に恵まれましたが、学園としての声望を維持し高めていくためには、これまでに培われた伝統を継承しつつ更なる発展をはかっていかなければなりません。

皆々様に従前にも増してご理解ご支援を賜りますようお願いいたします。