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  • 2017.07.03

    言葉の筋トレ22 The only way to have a friend is to be one. 友人を得る唯一の方法は、自分がその人の友人になることである。

    言葉の筋トレ 石井弘之

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第22回

The only way to have a friend is to be one. 友人を得る唯一の方法は、自分がその人の友人になることである。

Ralf Waldo Emerson
(この言葉は東棟4階にあります)

 前回(第21回)の続きである。と言っても中身ではない。英文法である。不定詞。すなわち to+動詞の原形というやつだ。確か中2で習うのではなかったか?
 前回の文はThe best way to predict the future is to create it.だった。今回の文と全く構文が同じだ。どちらにも二回to+動詞の原形が出てくる。そして二つをisでつないでいる。今回の文を使って説明しよう。前半の「The only way to have a friend」これはいわゆる不定詞の形容詞的用法というやつだ。way(方法)という名詞をto以下(友人を得る)が形容している。これはsomething to drink なんていう形でよく使う。後半の「to be one」はtoを「こと」と訳す、いわゆる名詞的用法だ。ここではone(友人:a friendを繰り返さないために言いかえた)にbe(なる)こと、の最後の「こと」がtoに与えられた役割だ。To play tennis is fun.というような使い方をする。
 私も中学生のころ高校受験をする必要上こういうことはそれなりに勉強した。でも「不定詞」「形容詞的用法」なんていう言葉を知っていることは、外国の人とのコミュニケーションには全く役に立たない。ここは英語学習のけっこう大きな検討ポイントなのである。実用英語を第一目標に掲げるとき、文法をいつ、どれだけ、どのように学ぶのか、ということだ。不定詞のような比較的わかり易い文法ならともかく、過去完了だ、仮定法だ、となってくるとホントについていけない生徒が出てくる。文法用語に負けるのだ。英語が使えるということとは別物だ。さてどうする?先日も英語改革の委員会で文法について話題となった。今後の重要課題のひとつだ。
 発音記号なども同様だ。前に外国語科の教員が発音記号を学ばせる重要性を力説していたのを聞いたが、今どきは電子辞書でもスマホでもネイティブの発音をスピーカーから発してくれるから、それを聞いた方がはるかに実践的だ。発音記号はあくまでも学習手段であって、知っていれば便利だろうが学習目的ではない。
 極論を言えば文法や発音記号の学習は外国語学習を生徒から遠ざけ、嫌いにさせる原動力になっている、とも言えるだろう。
 誤解されるのは不本意なので言っておくが、私は文法が嫌いではない。私は国語の教師だが、文学を味わう感性が全くないので、大学時代は国語学(文法や音韻学)を中心に学んだ。もうすっかり忘れちゃったが日本語の文法を一般人よりはかなりちゃんと学んだ方だと思う。
 初めて日本語の口語文法を学ぶ中学生に私は大概こういう話をしてきた。
「植物と触れ合うとき色々な接し方があるよね。花の美しさを味わう。これは芸術的なとらえ方。葉っぱが食べられるかどうか、種から油が取れるかどうか、これは実用的なとらえ方。そして雄しべは何本、ガクの形はこんなだ、根の役割は?これは科学的な見方だ。言葉も全く同じ。言葉が美しさを生み出す文学は芸術的な部分、言葉を使ったコミュニケーションは実用的な部分、そして言葉がどんな仕組みでできているか、言葉を対象として見ること、これが科学的なとらえ方だ。それを文法と呼んでいる。言葉を客観的に相対的に科学的に見る授業をするよ。」なーんていう話だ。
 さて最近の英語学習は実用が最優先である。それは当然の流れだ。では芸術も科学も後回しにするのか、それとも並行してやるのか。成城学園の英語教育は文法とどう向き合うのか、知恵を出し合わねばならない。
日本語でも文語文法は、古典を正確に理解するうえで極めて実用的に役に立つ。英文法の役割はそれに近いのかもしれない。さあ、明日から期末テストだ。英語、頑張れ!
 ちなみにエマーソンは19世紀に活躍したUSAの哲学者。