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  • 2017.06.19

    言葉の筋トレ21 The best way to predict the future is to create it.  未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。

    言葉の筋トレ 石井弘之

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第21回

The best way to predict the future is to create it.  未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。

Peter Drucker
(この言葉は西棟4階にあります)

 ピーター・ドラッカーの名を企業の経営者や管理職以外の多くの日本人に知らしめたのはもちろん通称「もしドラ」、すなわち『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』である。岩崎夏海の小説がベースだが、世間的に広まったのはそれを原作として作られた漫画・アニメ・映画のおかげだろう。
 当時私はAKB48といえば板野友美でしょ、と思っていたので、前田敦子というどこに魅力があるのかわからない女の子が総選挙で1位を獲得したことに首をかしげていた。だから前田敦子主演のこの映画を見る予定も全くなかった。ところが、どこに行くときのフライトだったか忘れたが、およそ見たい映画がなくて、やむを得ず飛行機の中で見ることになってしまったのだ。そのせいでちゃんとストーリーは知っている。野球部のマネージャーになった「みなみ」が野球の本だと勘違いしてドラッカーの『マネジメント』を手にしたことから野球部の改革を始める、というような話だ。映画版が世に出たのが大震災のあった2011年のことである。ドラッカーが亡くなったのは2005年だそうだから、日本での大ブームを本人は知らないわけだ。
 大学生のころ私はマルクスやレーニンなどの本か、SFばかり読んでいたのだが、組織ということに興味があって、ドラッカーの本を1冊だけ読んだことがある。たぶんこの『マネジメント』だったんじゃないかと思うのだが、正直自信がない。だから何となくは知っていたのだが、こういう形で日本中の若者が知る名前になるとは予想だにしていなかった。ドラッカーがマネジメントという概念を生み出したと言っても良いのだろうが、本校の生徒諸君も成城大学の経営学科に進むことがあるわけだから、「みなみ」に負けずにドラッカーの一冊くらい読んでおきな。
The best way to predict the future is to create it. 未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。
 10年後、50年後、社会はどうなっているか。という予測はしばしば語られる。しかし社会を作るのはもちろん私たち人間だ。だったら、どうなるか?ではなく、どうするか?どうしたいか?だろ。希望を実現するわけだから予測通りの世界になるというわけだ。もちろんちっぽけな自分ひとりではそんな夢物語のようなことは不可能だ。そういう反論はすぐに思いつく。でも「ちっぽけな自分」の集合体が社会というものだ。そしてあまりに平凡な答えだが、我々は民主主義とそれを支える選挙制度を守り抜いている。AKBの総選挙じゃなくて、マジな選挙だからね。未来を創る武器は言論と投票以外にはないが、可能性はゼロではない。
 実はこの文章を書くためにインターネットでドラッカーの生没年などを調べていたら、面白いことがわかった。今回ドラッカーの名言として取り上げたこの文の元ネタがリンカーン大統領の言葉だという説があるようなのだ。日本語のサイトには発見できなかったが、英語のページでは、ドラッカーの言葉として書かれているサイトとリンカーンの言葉として書かれているサイトの数は8:2くらいの比率だ。リンカーンの方は「the future」のバージョンと「your future」のバージョンを見つけた。ドラッカーの言葉として、もうここまで書いちゃったから書き直さないけど、誰か真相を調べて教えてね。