学園の歴史 / Topics

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【コラム】モーレイ育英会

2018.02.27

 「モーレイ育英会」という奨学金団体をご存じでしょうか?
学園OBが個人資産を投じて1981年に設立した団体で、これまで成城大生、成城学園高校生を中心に無償で奨学金を給付しています。
 幼稚園から高等学校まで成城学園で学んだ初代理事長の斉藤裕さん(故人)が「将来ある人のために少しでも尽くすことが出来たら」という思いから、後輩で友人の飯田嶺さんと協力し、飯田さんの個人資産を含めて独力で育英会を立ち上げたのが1981年。「モーレイ」というのは、小柄なあまり、ラグビーのスクラムからもれて(はみ出て)しまうことからついた斉藤さんの愛称だそうで、それがそのまま育英会の名称となりました。1年目の奨学生は14人。成城学園の生徒・学生のみでしたが、内閣府や東京都の方針で財団法人の基準として他の高校・大学生にも対応することになり、2年目から他の高校・大学の学生も受け入れました。毎年25~27人、一番多い時で32人を奨学生として迎え、これまで計1307人(うち成城の学生・生徒は270人)に給付してきました。
 奨学金といえば「返済」をめぐって社会問題が起きていますが、モーレイ育英会では設立当初から返済する義務がない「給付」という形をとっています。現在でこそ、このような形の奨学金制度が順々に増えていますが、設立当時はひとつもありませんでした。米国やスウェーデン、スイス、イギリスなど大半の先進国は厳しい審査を経て奨学金を給付しているだけに「返してもらうなら育英とは言えない」という強い信念からくるものです。奨学生となる条件は、成績を第一にするのではなく「人とのお付き合いがきちんとできるとか、約束を守るとかいうことに重点を置いている」と設立時から常務理事で、現在五代目を務める飯田嶺さんは説明します。会の規約は決して難しいことではなく、でも大切な約束として三項目を決めています。①年三回開催する研修会に参加して役員と面談②日本文化の象徴としての年賀状と暑中見舞いを手書きで出す③年一回の会報に掲載する自己紹介文と作文を提出する、以下の育英会の活動に必ず参加することです。奨学生一人ひとりにしっかり関わる姿勢は、家庭的な成城カラーを象徴しています。2011年の東日本大震災時には、自宅が全壊・半壊した成城大の学生8人も支援したそうです。
 目まぐるしい時代の移り変わりとともに、子供たちも親も「変わってきている」と飯田さんは言います。領収書が書けない、研修会に参加しないなど会の規約を守れなかった人はペナルティーを受けたりしていますが「学校では教えない教育外教育も必要だと思います。約束を守る、それは今の日本人に足りないこと」だと感じるそうです。「いい日本人になってくれ」というのがモーレイ育英会の合言葉。学習環境を整えるだけでなく、人間教育にも力を注いでいます。
 たくさんの奨学生たちと交流し、奨学生同士の交流などを通じて「育っていくのを見るのはとても楽しい」と飯田さんは目を細めます。これまでの奨学生には、海外の大学の副学長になったり、大手企業の役員になった人もいます。それはモーレイ育英会の支援を受け、人間として成長しながら一生懸命勉学に励んだ結果です。飯田さんは今後の育英会発展のため、最後にこう言いました。「皆様方の中でこのような素晴らしい会の趣旨に賛同していただける人がいましたら是非ご協力いただければ幸いです」。

(2015年12月 執筆)


  • 初代理事長の「モーレイ」こと斉藤裕さん


  • 昭和56年の設立第1回目の奨学生と役員の交流会